家族が病院で亡くなった直後、悲しみの中で次々と判断を迫られ、病院から紹介された葬儀社にそのまま依頼してしまう。多くの方が「後になって費用が高すぎることに気づいた」と後悔しています。
問題の根本は、病院での安置時間が数時間程度しかないという現実です。日本では約65%の方が病院で最期を迎えますが、十分な検討時間もないまま、その場で葬儀社を決めてしまいがちです。
この記事では、最新の費用相場と法的根拠に基づいて、病院で家族を亡くされた方が取るべき具体的な行動を解説します。最も重要なのは「搬送と葬儀を分けて依頼できる」という選択肢です。
病院で亡くなった直後にすべきこと、信頼できる葬儀社の見分け方、葬儀費用の相場(家族葬97〜110万円、一般葬144〜191万円)、そして必要な手続きの全体像をお伝えします。
この記事を読むことで、突然の出来事に直面しても冷静に判断できる知識が身につき、葬儀社選びで後悔することを避けられます。
搬送を依頼した葬儀社に必ずしも葬儀も依頼する必要はない——この事実を知っているだけで、納得のいく葬儀社選びができるようになります。
病院で家族が亡くなった直後にすべき3つのこと
現代の日本では約65%の方が病院で最期を迎えます。突然の出来事に動揺している中でも、まず確実に行うべきことは3つです。これらを押さえておけば、その後の手続きがスムーズに進みます。
死亡診断書を医師から受け取る
家族が病院で亡くなった場合、まず医師から死亡診断書を受け取ります。これは死亡の事実と原因を医学的に証明する重要な公文書で、その後のすべての手続きに必要となります。
📋 死亡診断書の受け取りパターン:
- 病院で亡くなった場合:臨終に立ち会った医師から死亡診断書が発行されます
- 自宅で亡くなった場合:死亡を確認した医師(往診医など)から死亡診断書が発行されます
- 事故死や変死・自死の場合:警察に届け出て検視後、「死体検案書」が交付されます
死亡診断書は死亡届の提出や火葬許可証の取得に必須です。葬儀社への依頼時にも必要となるため、受け取ったらすぐに確認し、大切に保管しましょう。
遺体の安置場所を決める
死亡診断書の発行後、次に決めなければならないのは遺体の安置場所です。
病院では基本的に長時間の遺体安置はできません。これは病院の設備や機能の制約によるものです。病院はあくまで生きている人を治療する場所であり、亡くなった方のケアを長時間行う設備は整っていません。多くの病院では数時間から半日程度しか安置できないため、速やかに安置先を決める必要があります。
🏠 遺体の安置先として一般的な選択肢:
- 自宅:住み慣れた家で故人を送り出したい場合。仏間やリビングに安置することが多い
- 葬儀社の安置施設:自宅での安置が難しい場合。24時間空調管理された専用施設
- 寺院の安置所:菩提寺がある場合。檀家として寺院の施設を利用できることがある
自宅への安置を希望する場合は、スペースの確保や家族の心理的負担も考慮して決める必要があります。マンションの場合、エレベーターや階段の幅、搬入経路の確認も重要です。
葬儀社に連絡して搬送を依頼する
遺体を安置場所へ搬送するためには、葬儀社への依頼が必要となります。この搬送の依頼先となる葬儀社の選択が、その後の葬儀全体の流れを左右する重要な決断となります。
事前に葬儀社が決まっていればすぐに連絡できますが、多くの方は突然の出来事に直面し、その場で判断を迫られます。搬送の依頼先となった葬儀社には、そのまま葬儀全体の進行を任せることが一般的ですが、必ずしもそうする必要はありません。
搬送のみを依頼して、後から別の葬儀社に葬儀を依頼するという選択肢もあることを知っておきましょう。これにより、冷静に葬儀社を比較検討する時間を確保できます。
病院での遺体安置時間と搬送までの流れ
病院で家族が亡くなった場合、時間との戦いになることを理解しておく必要があります。限られた時間内に適切な判断を下すため、基本的な流れと時間的制約を把握しておきましょう。
病院での安置可能時間は数時間程度
病院での遺体安置には厳しい時間的制約があります。
⏰ 一般的な安置可能時間:
- 通常の病院:数時間程度(2〜6時間が目安)
- 夜間に亡くなった場合:翌朝までの安置が可能な場合もある
- 病床の稼働率や設備:病院ごとに安置可能時間は異なる
この限られた時間内に、葬儀社の選定や搬送先の決定を行わなければなりません。遠方にいるご遺族の場合は、事前に病院に事情を説明することで、安置時間の延長を相談できる可能性があります。ただし、病院の状況によっては難しい場合もあるため、できるだけ早く対応することが重要です。
そのため、事前に葬儀社についての情報を集めておくことが望ましいです。突然のことで混乱している中でも、冷静に判断するためには時間的な余裕がありません。
搬送先の選択肢(自宅・葬儀社施設・寺院)
搬送先として選べる場所は主に3つあります。それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、家族の状況に合った選択をしましょう。
| 搬送先 | メリット | デメリット | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| 自宅 | 住み慣れた環境で故人と最後の時間を過ごせる。費用を抑えられる | スペースの確保が必要。ご近所への配慮が必要。マンションの場合搬入が困難な場合がある | 搬送費のみ |
| 葬儀社の安置施設 | 24時間空調管理。スペースの心配不要。葬儀社のサポートを受けやすい | 安置料金が発生する(1日1〜2万円程度) | 搬送費+安置料 |
| 寺院の安置所 | 宗教的な環境で故人を供養できる。檀家の場合は割安なことが多い | 菩提寺がない場合は利用できない。寺院によって対応が異なる | 搬送費+お布施 |
自宅への搬送を選ぶ場合、搬入経路の確認が重要です。特にマンションの場合、エレベーターの大きさ、階段の幅、廊下の曲がり角などを事前に確認しておきましょう。搬入が困難な場合は、葬儀社の安置施設を利用することになります。
搬送費用の相場と内訳
遺体の搬送費用は距離によって変動します。基本的には葬儀社の寝台車(霊柩車)を使用し、距離に応じた料金が設定されています。
| 走行距離 | 搬送料金の目安 |
|---|---|
| 10km以内 | 1〜2万円 |
| 10〜50km | 2〜4万円 |
| 50〜100km | 4〜5万円 |
| 100〜200km | 5〜10万円 |
| 200〜300km | 10〜13万円 |
💰 追加費用が発生するケース:
- 早朝・深夜の搬送:通常料金に4,000円前後の割増料金が加算される
- 安置施設の利用:1日あたり1〜2万円の安置料金が必要
- 遠方への搬送:高速道路料金が別途請求される場合がある
搬送費用は葬儀社によって料金体系が異なるため、依頼する前に必ず見積もりを確認しましょう。「搬送費用一式」という曖昧な表記ではなく、基本料金と追加料金の内訳を明確にしてもらうことが重要です。
葬儀社選びで失敗しないための5つのポイント
ご家族が病院で亡くなった直後、多くの方が混乱と悲しみの中で判断を迫られます。その中でも特に重要なのが葬儀社の選択です。選んだ葬儀社によって、その後の手続きの円滑さ、葬儀の質、そして費用が大きく左右されます。
事前に複数社を比較しておくことの重要性
事前に葬儀社を探しておくことは、突然の出来事に対する最も効果的な備えとなります。人の死は予測できないタイミングでやってきます。病院での安置は数時間程度しか許されないことが多く、その短い時間内に適切な葬儀社を見つけるのは非常に困難です。
✅ 事前準備の具体的なメリット:
- 判断の質の向上:冷静な状態で複数の葬儀社を比較検討できる
- 時間的余裕:価格やサービス内容をじっくり確認できる
- 精神的負担の軽減:突然の出来事に対する心理的ストレスを軽減できる
故人の生前に終活の一環として葬儀社を検討することは、決して縁起が悪いことではありません。むしろ、残された家族への思いやりであり、より納得のいく葬儀を実現するための重要なステップです。
信頼できる葬儀社の見分け方
信頼できる葬儀社を選ぶためには、以下のポイントを確認することが大切です。
🔍 チェックすべき5つの項目:
- 透明性のある料金体系:追加料金の有無や内訳が明確に説明されている
- 丁寧な対応と説明:質問に対して分かりやすく誠実に答えてくれる
- 柔軟性:家族の希望や予算に合わせたプランを提案してくれる
- 実績と評判:口コミや知人の体験談などから信頼性を確認できる
- 施設の状態:安置施設や葬儀会場が清潔で設備が整っている
選び方として最も効果的なのは、複数の葬儀社から見積もりを取り比較することです。見積もりを取る際は、同じ条件(参列人数、葬儀の規模など)で依頼し、適切な比較ができるようにしましょう。
また、葬儀社のウェブサイトや実際の施設を見学することも重要です。特に施設見学では、スタッフの対応や設備の状態から葬儀社の質を判断することができます。
透明性のある料金体系を確認する
葬儀費用のトラブルで最も多いのが、後から追加料金が発生するケースです。見積もりの段階で料金体系が明確でない葬儀社は避けるべきです。
⚠️ 要注意な料金表示:
- 「葬儀一式〇〇万円」という曖昧な表記
- 基本プランに含まれる内容が明記されていない
- オプション料金の説明がない
- 「お布施は別途」など重要な費用が抜けている
信頼できる葬儀社は、見積書に何が含まれていて何が含まれていないかを明確に記載します。疑問点があれば遠慮せず質問し、納得できるまで説明を求めましょう。
見積もり比較で注意すべき項目
複数の葬儀社から見積もりを取ったら、単純に総額だけを比較するのではなく、内容を詳細に確認することが重要です。
📊 見積もりチェックポイント:
- 基本セットの内容:祭壇、棺、遺影写真、式場使用料などが含まれているか
- 搬送費:距離や時間帯による追加料金の有無
- 返礼品・接待費:参列者への返礼品や食事代が含まれているか
- 火葬料金:火葬場の使用料が含まれているか(別料金の場合が多い)
- キャンセルポリシー:契約後にキャンセルとなった場合の取り扱い
- 支払い条件:いつ、どのような方法で支払うのか
安価に見える見積もりでも、後から多くの追加料金が発生するケースがあります。最終的に葬儀社を選ぶ際は、価格だけでなく信頼性とサービスの質を重視することが重要です。
口コミや実績を確認する方法
葬儀社の実際のサービス品質を知るには、利用者の声が最も参考になります。
🔎 情報収集の方法:
- インターネットの口コミサイト:Google レビュー、葬儀ポータルサイトの評価を確認
- 知人・親族の体験談:実際に利用した人の生の声は信頼性が高い
- 地域の評判:地元で長く営業している葬儀社は信頼性が高い傾向がある
- 葬儀社の対応:問い合わせ時の電話対応や説明の丁寧さで判断できる
ただし、インターネットの口コミには極端な意見も含まれるため、複数の情報源から総合的に判断することが大切です。最も安い葬儀社が必ずしも最良の選択とは限りません。故人と家族にとって最も適した葬儀を実現できる葬儀社を選びましょう。
病院から紹介される葬儀社のメリットとデメリット
病院でご家族が亡くなった直後、多くの場合、病院側から葬儀社の紹介を受けることがあります。これは病院としても遺族へのサービスの一環ですが、この状況をしっかり理解しておくことが重要です。
病院提携葬儀社の仕組み
病院提携の葬儀社の地位は、葬儀社自身が病院へ積極的に営業活動を行って獲得したものです。日本では約65%の方が病院で亡くなるため、葬儀社にとって病院は最も重要な顧客獲得の場となっています。
病院は葬儀社を推奨しているわけではなく、単に提携関係があるだけのケースがほとんどです。病院から紹介される葬儀社は、葬儀をビジネスとして真剣に取り組んでいる企業である可能性が高いことを理解しておきましょう。これは良い面もありますが、同時に商業的な観点が強い場合もあることを意味します。
メリット:迅速な対応と病院内手続きへの精通
病院提携の葬儀社を利用する場合の主なメリットを知っておきましょう。
✅ 病院提携葬儀社の利点:
- すぐに対応してもらえる:病院との連携がスムーズで、搬送から葬儀までの手続きがスピーディに進む
- 病院内での手続きに精通している:死亡診断書の受け取りなど、病院内での手続きに慣れている
- 一定の信頼性:病院が紹介する以上、最低限の信頼性は担保されていることが多い
特に時間的余裕がない場合や、初めての経験で何をすればよいか分からない場合には、病院提携の葬儀社を利用するのも一つの選択肢です。
デメリット:価格が割高な可能性と比較機会の喪失
一方で、病院提携の葬儀社にはデメリットもあります。
⚠️ 注意すべきポイント:
- 価格が割高な場合がある:病院への紹介料や営業コストが価格に上乗せされている可能性がある
- 比較検討の機会を逃す:急いでいる状況で決めてしまうため、他社と比較する機会を失いがち
- 必ずしも適切な選択とは限らない:家族の希望や予算に最適な葬儀社とは限らない
また、病院から紹介を受ける遺族は「葬儀の準備をしていない顧客」と見なされる傾向があります。具体的には以下のような状況です:
- 事前に葬儀社の検討をしていない
- 葬儀に関する知識が限られている
- 時間的制約の中で決断を迫られている
このような状況では、葬儀社の提案を鵜呑みにしてしまうリスクがあります。良心的な葬儀社であれば問題ありませんが、この時点で不利な条件が揃っていることを認識しておくべきです。
葬儀ブローカーに注意すべき理由
病院内には、時に葬儀社の営業マンやブローカーが存在していることがあります。彼らは遺族をターゲットに顧客開拓を行っている場合があります。
🚨 ブローカーの見分け方:
- 病院提携の葬儀社や病院関係者を装う:正規のスタッフのように振る舞い、自然に声をかけてくる
- 名刺や身分証の確認が曖昧:所属や役職が明確でなかったり、名刺を渡さない場合は注意
- 急かす態度:「今すぐ決めないと」と即断を迫る姿勢が見られる
- 具体的な説明が少ない:料金体系や内容について詳しい説明を避けようとする
💡 営業を受けた場合の適切な対応:
- まず名刺をもらう:会社名、連絡先を必ず確認する
- 即決しない:「家族と相談したい」と伝え、その場での決断を避ける
- 複数の選択肢を検討する:他の葬儀社の情報も集め、比較検討する時間を確保する
- 具体的な見積もりを要求する:曖昧な説明ではなく、書面での具体的な見積もりを依頼する
- 病院スタッフに確認する:本当に病院と提携している葬儀社なのか、看護師や医師に確認する
家族が亡くなって動揺している時こそ、冷静な判断が必要です。葬儀社選びは後悔しないためにも、できる限り情報を集めてから決断することをおすすめします。
搬送だけ依頼して葬儀社を別に選ぶ方法
多くの方が勘違いしていることですが、病院で搬送を依頼した葬儀社に必ずしも葬儀も依頼する必要はありません。病院での対応で決めなければならないのは、主にご遺体の安置場所の決定と搬送方法です。
搬送と葬儀を分けることは可能
搬送は基本的に葬儀社へ依頼することになりますが、その後の葬儀をどこに依頼するかは別の判断として考えることができます。この選択肢を知っているだけで、冷静に葬儀社を選ぶ時間的余裕を確保できます。
搬送と葬儀を別々に依頼することには、いくつかの重要なメリットがあります。最大の利点は、葬儀社選びに十分な時間をかけられるということです。家族が病院で亡くなった直後は、心理的にも時間的にも余裕がありません。しかし葬儀は決して安くない費用がかかる大切な儀式です。
🎯 搬送だけを先に依頼することで得られるメリット:
- 複数の葬儀社の見積もりを比較検討する時間が確保できる
- 家族や親族と十分に相談した上で意思決定ができる
- 急いで決めることによる後悔や不満を避けられる
- 葬儀の予算や内容をじっくり考える余裕ができる
搬送のみ依頼する際の伝え方
葬儀社に搬送のみを依頼する場合、明確な意思表示が重要です。病院から紹介された、あるいは自分で連絡した葬儀社に対して、搬送と安置のみの依頼であることをはっきりと伝えましょう。
💬 具体的な伝え方の例:
「現時点では搬送と安置のみをお願いしたいのですが、対応していただけますか?葬儀については改めて検討させていただきます」
「まずは病院から自宅(または安置施設)への搬送をお願いしたいです。葬儀については家族と相談してから決めたいと思っています」
多くの葬儀社は搬送を依頼されると、自然な流れで葬儀の打ち合わせに移行しようとします。「では続いて葬儀の打ち合わせを…」といった提案があった場合に備え、あらかじめ明確に伝えておくことが大切です。
⚠️ 搬送のみの依頼に対応してくれる葬儀社を選ぶポイント:
- 24時間対応可能であること
- 搬送料金が明確であること
- 安置施設が整っていること
搬送後に葬儀社を選び直すメリット
ご遺体の搬送と安置が完了したら、改めて葬儀社選びを始めましょう。このとき、少なくとも2〜3社から見積もりを取ることをお勧めします。葬儀社によって提供するサービスや料金体系は大きく異なるため、比較検討が重要です。
葬儀社を選ぶ際の具体的な手順としては、まず家族で葬儀の規模や形式について話し合いましょう。家族葬にするのか、一般的な葬儀にするのか、または直葬(火葬のみ)にするのかなど、方向性を決めておくと葬儀社とのやり取りがスムーズになります。
複数社から見積もりを取る具体的手順
搬送・安置後に葬儀社を選び直す場合の進め方を具体的に説明します。
📝 葬儀社選びの手順:
1. 家族で葬儀の方向性を決める
- 葬儀の形式(一般葬、家族葬、直葬など)
- 参列者の規模(何名程度を想定するか)
- 予算の目安(どの程度の費用をかけられるか)
2. 複数の葬儀社に連絡する
- 現在の状況(すでに搬送・安置済みであること)を説明
- 希望する葬儀の形式について相談
- 見積もりを依頼
3. 見積もりを比較検討する
- 料金の安さだけでなく、提供されるサービスの内容を確認
- 追加料金の有無をチェック
- スタッフの対応の丁寧さや説明の分かりやすさも評価
4. 葬儀社を決定し、引き継ぎを依頼
- 決定したら、現在安置している葬儀社に連絡
- 葬儀を担当する葬儀社との引き継ぎについて相談
- 多くの場合、葬儀社同士で専門的なやり取りを行ってくれる
葬儀は故人を送り出す大切な儀式です。搬送と葬儀を分けて考えることで、納得のいく選択をするための時間的余裕を確保することができます。特に事前に葬儀社を検討していなかった場合には、この選択肢を覚えておくと安心です。
葬儀費用の相場と内訳
葬儀にかかる費用は、規模や地域によって大きく異なりますが、一般的な相場を知っておくことで不当な請求を避けることができます。
葬儀全体の費用相場(形式別)
2024〜2025年時点での葬儀費用の相場は以下の通りです。
| 葬儀形式 | 費用相場 | 参列者数の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 一般葬 | 144〜191万円 | 50〜100名以上 | 従来の一般的な葬儀形式。告別式を行い、多くの弔問客を受け入れる |
| 家族葬 | 97〜110万円 | 10〜30名程度 | 家族や親しい友人のみで行う小規模な葬儀。近年増加傾向 |
| 一日葬 | 約95万円 | 20〜40名程度 | 通夜を省略し、告別式のみを行う形式 |
| 直葬(火葬のみ) | 39〜40万円 | 10名以下 | 葬儀・告別式を行わず、火葬のみで送る最もシンプルな形式 |
全国平均は約127〜132万円となっていますが、これは葬儀の基本セット料金のみの場合です。実際には飲食接待費や返礼品、お布施などが加算されるため、総額はさらに高くなります。
元記事では一般葬を「200万円前後」としていましたが、これは飲食接待費や返礼品を含めた総額と考えれば理解できる範囲です。ただし、基本的な葬儀費用だけでは約144〜191万円程度が目安となります。
家族葬の費用(約97〜110万円)
家族葬は近年増加傾向にある葬儀形式で、家族や親しい友人のみで故人を送る小規模な葬儀です。
💰 家族葬の費用内訳:
- 基本セット料金:60〜80万円(祭壇、棺、遺影写真、式場使用料など)
- 返礼品・接待費:10〜20万円(参列者への返礼品や食事代)
- 火葬料金:5〜10万円(火葬場の使用料)
- その他:10〜20万円(お布施、会葬礼状など)
家族葬のメリットは、参列者が少ないため遺族の負担が軽減される点です。接待や対応に追われることなく、故人とゆっくり最後の時間を過ごせます。ただし、参列できなかった方への事後対応(弔問対応など)が必要になる場合があります。
一般葬の費用(約144〜191万円)
一般葬は従来の一般的な葬儀形式で、多くの弔問客を受け入れる大規模な葬儀です。
💰 一般葬の費用内訳:
- 基本セット料金:80〜120万円(祭壇、棺、遺影写真、式場使用料など)
- 返礼品・接待費:30〜50万円(参列者への返礼品や食事代)
- 火葬料金:5〜10万円(火葬場の使用料)
- その他:20〜30万円(お布施、会葬礼状など)
一般葬の場合、参列者数が多くなるため、返礼品や飲食接待の費用が大きく膨らむ傾向があります。参列者が100名を超える場合、返礼品だけで50万円以上かかることも珍しくありません。
直葬(火葬のみ)の費用(約39〜40万円)
直葬は葬儀・告別式を行わず、火葬のみで故人を送る最もシンプルな形式です。
💰 直葬の費用内訳:
- 基本料金:15〜25万円(棺、ドライアイス、寝台車など)
- 搬送費:2〜5万円(病院から火葬場への搬送)
- 火葬料金:5〜10万円(火葬場の使用料)
- その他:5〜10万円(死亡診断書、火葬許可証など)
直葬は費用を最小限に抑えられる一方で、後から「きちんと見送れなかった」という後悔を感じる遺族もいます。また、菩提寺がある場合、直葬では納骨を断られるケースもあるため、事前に確認が必要です。
地域による費用差
葬儀費用は地域によっても大きく異なります。
| 地域 | 平均費用 |
|---|---|
| 首都圏(東京・神奈川など) | 約112.4万円 |
| 北陸地方 | 約137.4万円 |
| 全国平均 | 約127〜132万円 |
地域差の理由は、地域の慣習や式場の数、競争状況によるものです。首都圏では葬儀社の競争が激しく、価格が比較的抑えられている一方、地方では選択肢が少なく、価格が高止まりしている地域もあります。
追加料金が発生しやすい項目
葬儀の見積もりで注意すべきは、基本料金に含まれない追加料金です。
⚠️ 追加料金が発生しやすい項目:
- お布施:僧侶へのお礼。通夜・告別式で15〜50万円程度(宗派や地域により大きく異なる)
- 戒名料:戒名のランクにより10〜100万円以上
- 供花・供物:1基あたり1〜3万円
- ハイヤー・マイクロバスの手配:遺族や参列者の送迎が必要な場合
- 遺影写真の作成:基本プランに含まれない場合、1〜3万円
- 会葬礼状の印刷:枚数により追加料金が発生
- 火葬場の待合室使用料:地域により別途必要な場合がある
見積もりを取る際は、これらの項目が含まれているかどうかを必ず確認しましょう。特にお布施は金額が大きいにも関わらず、見積書に記載されないことが多いため、別途予算を確保しておく必要があります。
死亡届の提出と火葬許可証の取得方法
病院でご家族が亡くなった場合、法的に必要な手続きが複数あります。これらは火葬を行うための必須の手続きであり、期限内に確実に行う必要があります。
死亡届の提出期限は7日以内(法的根拠)
死亡届は戸籍法第86条により、死亡の事実を知った日から7日以内に提出することが義務付けられています。
📅 死亡届提出の基本ルール:
- 提出期限:死亡の事実を知った日から7日以内(国内での死亡の場合)
- 提出先:故人の本籍地、死亡地、届出人の住所地のいずれかの市区町村役場
- 提出者:親族、同居者、家主、地主、家屋管理人など(葬儀社に代行依頼も可能)
- 必要書類:死亡診断書(または死体検案書)、届出人の印鑑
⚠️ 期限を過ぎた場合の罰則:
戸籍法第137条により、正当な理由なく期限内に届け出なかった場合、5万円以下の過料に処される可能性があります。
ただし、実際には火葬を行うために必要なため、死亡当日か翌日には提出するのが一般的です。7日以内という期限は法律上の最大期限であり、実務上はもっと早く手続きを済ませることになります。
💡 例外規定:
- 7日目が役所の閉庁日(土日祝日)に重なった場合は、翌開庁日までに提出すれば問題ありません
- 死亡の事実を知らなかった場合は、知った日から7日が起算開始日となります
火葬許可証の取得プロセス
火葬を行うためには、火葬許可証の取得が必須です。この許可証がなければ火葬場で火葬を行うことはできません。
🔄 火葬許可証取得の流れ:
1. 医師から死亡診断書を取得
- 病院で亡くなった場合は臨終に立ち会った医師から発行
- 事故死や変死の場合は警察の検視後に「死体検案書」が発行
2. 死亡届と火葬許可申請書を役所に提出
- 死亡届と火葬許可申請書は通常セットになっている
- 住民票所在地の市区町村役場に提出
3. 市区町村から火葬許可証が発行される
- 通常、申請当日に発行される
- 平日のみ対応の自治体と、土日も対応する自治体がある
- 夜間受付の場合、翌開庁日以降の交付となることが多い
4. 火葬場に火葬許可証を提出
- 火葬当日に火葬場へ提出
- 火葬終了後、火葬許可証に火葬済の証印が押される
- この証印付きの火葬許可証が「埋葬許可証」となり、納骨時に必要
📌 重要な注意点:
- 手数料は多くの自治体で無料ですが、再発行の場合は数百円の手数料が発生する場合があります
- 火葬許可証は非常に重要な書類なので、火葬後も大切に保管してください
- 納骨時に必要となるため、紛失しないよう注意が必要です
葬儀社に代行依頼できる手続き
死亡届の提出や火葬許可証の取得は、葬儀社に代行依頼できることがほとんどです。多くの葬儀社では、これらの手続きを一括で代行してくれるサービスを提供しています。
✅ 葬儀社が代行できる主な手続き:
- 死亡届の提出
- 火葬許可証の申請と受け取り
- 火葬場の予約
- 火葬当日の火葬許可証の提出
代行を依頼する場合、葬儀社に死亡診断書の原本と届出人の印鑑を渡す必要があります。死亡診断書は複数枚必要になる場合があるため、事前に医師に複数枚発行を依頼する(通常1通あたり3,000〜5,000円)か、役所でコピーを取っておくことをおすすめします。
葬儀社に代行を依頼すれば、遺族は役所に出向く必要がなく、時間的・精神的な負担を軽減できます。特に突然の出来事で混乱している中では、専門家に任せることで安心して他の準備に集中できます。
火葬は死後24時間以降でなければできない
日本の法律(墓地、埋葬等に関する法律第3条)により、死後24時間以内の火葬は原則として禁止されています。
⏰ 24時間規定の理由:
この規定は、仮死状態の可能性を排除するための措置です。かつては医療技術が発達しておらず、仮死状態を死亡と誤認するケースがあったため、このような規定が設けられました。
💡 例外規定:
- 感染症法に規定する一類感染症(エボラ出血熱など)で死亡した場合
- 24時間以内の火葬が公衆衛生上必要と認められる場合
そのため、病院で亡くなった場合でも、最短で翌日の火葬となります。通常、死亡当日は通夜、翌日に告別式と火葬という流れになることが多いです。直葬の場合でも、死後24時間経過するまでは火葬できないため、安置場所での待機が必要となります。
葬儀後に必要な手続きチェックリスト
葬儀・火葬が終わった後も、様々な手続きが必要になります。これらは葬儀後1〜3ヶ月程度かけて進めていくことになります。
健康保険の資格喪失手続き
故人が加入していた健康保険の資格喪失手続きは、死亡後14日以内に行う必要があります。
📋 手続きの流れ:
- 国民健康保険の場合:市区町村役場の国民健康保険課に保険証を返却
- 社会保険(会社員)の場合:勤務先の人事部または総務部に保険証を返却
- 後期高齢者医療制度の場合:市区町村役場の担当窓口に保険証を返却
保険証は家族全員分(被扶養者分も含む)を返却する必要があります。返却時には死亡診断書のコピーや戸籍謄本が必要になる場合があるため、事前に確認しましょう。
葬祭費・埋葬料の申請(社会保険5万円、国保3〜7万円)
故人が加入していた健康保険から、葬祭費または埋葬料の給付金を受け取ることができます。ただし、申請しなければ支給されないため、忘れずに手続きを行いましょう。
💰 給付金の種類と金額:
社会保険(協会けんぽ等)の埋葬料:
- 支給額:5万円(法律で一律)
- 健康保険組合によっては付加給付として2〜3万円上乗せされる場合がある
- 申請期限:死亡日から2年以内
国民健康保険の葬祭費:
- 支給額:3〜7万円(自治体により異なる)
- 東京23区では7万円、福岡市では3万円など地域差がある
- 申請期限:葬儀を行った日から2年以内
📝 申請に必要な書類:
- 葬祭費(埋葬料)支給申請書
- 故人の健康保険証(返却済みの場合は不要)
- 死亡診断書のコピーまたは火葬許可証のコピー
- 葬儀の領収書または会葬礼状
- 申請者(喪主)の銀行口座情報
- 申請者の印鑑
申請先は、社会保険の場合は勤務先または健康保険組合、国民健康保険の場合は市区町村役場となります。申請期限が決まっているため、できるだけ早めに手続きを行いましょう。
年金関連の手続き
故人が年金を受給していた場合、複数の年金関連手続きが必要です。
📋 主な年金手続き:
1. 年金受給停止の手続き
- 国民年金:死亡後14日以内に年金事務所または市区町村役場へ届出
- 厚生年金:死亡後10日以内に年金事務所へ届出
- 年金証書と死亡診断書のコピーを持参
2. 未支給年金の請求
- 故人が受け取っていなかった年金を遺族が請求できる
- 請求期限:死亡日から5年以内
- 生計を同じくしていた遺族が対象
3. 遺族年金の請求
- 故人に生計を維持されていた遺族が受給できる年金
- 遺族基礎年金(国民年金):18歳未満の子がいる配偶者または子
- 遺族厚生年金(厚生年金):配偶者、子、父母、孫、祖父母
- 請求期限:死亡日から5年以内(ただし早めの手続きが推奨される)
年金関連の手続きは複雑で、個別の状況により異なるため、年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
銀行口座・不動産・車などの名義変更
故人の財産に関する名義変更手続きは、相続手続きの一環として行います。
🏦 主な名義変更手続き:
銀行口座の手続き:
- 金融機関に死亡を届け出ると、口座が凍結される
- 相続人全員の同意書類(遺産分割協議書など)が必要
- 必要書類:戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書など
不動産の名義変更:
- 相続登記(法務局で手続き)が必要
- 2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記が必要
- 必要書類:登記申請書、戸籍謄本、遺産分割協議書、固定資産評価証明書など
自動車の名義変更:
- 陸運局で相続による移転登録手続き
- 必要書類:車検証、戸籍謄本、遺産分割協議書、車庫証明書など
その他の名義変更:
- 株式・証券口座
- 生命保険の受取
- クレジットカードの解約
- 運転免許証の返納
これらの手続きは相続人全員の同意が必要な場合が多く、複雑です。特に不動産や高額な財産がある場合は、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
公共料金・各種契約の解約や変更
故人名義の各種契約について、解約または名義変更の手続きが必要です。
📞 解約・変更が必要な主な契約:
- 電気・ガス・水道:契約者変更または解約
- 電話・インターネット:契約者変更または解約
- NHK受信料:契約者変更または解約
- クレジットカード:解約手続き
- 携帯電話・スマートフォン:解約手続き
- サブスクリプションサービス:定額制の動画配信、音楽配信などの解約
- 新聞:契約者変更または解約
- 賃貸住宅:賃貸借契約の解約または名義変更
これらの手続きは、基本的に各契約先に連絡して指示を仰ぐ形で進めます。契約内容によっては違約金が発生する場合もあるため、契約書を確認しましょう。
特に注意が必要なのは、自動引き落としの契約です。銀行口座が凍結されると引き落としができなくなり、延滞扱いになる可能性があるため、早めに解約または変更手続きを行いましょう。
よくある質問
- 病院で亡くなった場合、どのくらいの時間内に遺体を搬送しなければなりませんか?
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病院では数時間から半日程度しか遺体を安置できません。多くの場合、数時間以内の搬送が求められますが、夜間に亡くなった場合は翌朝まで安置可能なこともあります。病院の状況によって異なるため、看護師や医師に確認しましょう。
- 病院から紹介された葬儀社を断ることはできますか?
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はい、断ることができます。病院が紹介する葬儀社を利用する義務はありません。「家族と相談してから決めたい」と伝えれば問題ありません。複数の葬儀社を比較検討してから決めることをおすすめします。
- 搬送を依頼した葬儀社に必ず葬儀も頼まなければいけませんか?
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いいえ、搬送のみを依頼することも可能です。「現時点では搬送と安置のみお願いしたい」と明確に伝えれば、葬儀は別の葬儀社に依頼できます。搬送後にじっくり葬儀社を選び直すことで、納得のいく選択ができます。
- 葬儀社を選ぶ時間がない場合はどうすればよいですか?
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まず搬送のみを依頼し、安置後に改めて葬儀社を選ぶ方法があります。病院提携の葬儀社に搬送を依頼し、その後2〜3社から見積もりを取って比較検討すれば、冷静な判断ができます。
- 死亡診断書はいつ受け取れますか?費用はかかりますか?
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死亡診断書は臨終後、医師が死亡を確認したらすぐに発行されます。費用は1通あたり3,000〜5,000円程度です。複数の手続きで必要になるため、2〜3通発行してもらうか、役所でコピーを取っておくことをおすすめします。
- 夜間や休日に亡くなった場合、死亡届はどうすればよいですか?
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多くの市区町村役場では夜間や休日でも死亡届の受付を行っています。ただし、火葬許可証の発行は翌開庁日になることが多いです。葬儀社に代行を依頼すれば、開庁時間に合わせて手続きしてもらえます。
- 葬儀費用の支払いはいつ、どのように行いますか?
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葬儀費用の支払いは、葬儀終了後に請求書が発行され、1週間から1ヶ月以内に支払うのが一般的です。支払い方法は現金、銀行振込、クレジットカードなどが選べます。分割払いに対応している葬儀社もあるため、事前に確認しましょう。
- 葬儀社の見積もりはどのタイミングで取ればよいですか?
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理想的には生前に複数社から見積もりを取っておくことです。突然の出来事の場合は、搬送・安置後に見積もりを取ることもできます。見積もりは無料で、同じ条件で2〜3社に依頼して比較検討することが重要です。
まとめ
病院で家族が亡くなった場合、まず死亡診断書を受け取り、遺体の安置場所を決め、葬儀社に搬送を依頼します。病院での安置は数時間程度しかできないため、速やかな対応が必要です。
葬儀社選びでは、搬送を依頼した葬儀社に必ずしも葬儀を依頼する必要はありません。搬送のみを依頼し、その後複数の葬儀社から見積もりを取って比較検討することで、納得のいく選択ができます。
葬儀費用の相場は、家族葬で約97〜110万円、一般葬で約144〜191万円、直葬で約39〜40万円です。見積もりでは基本料金だけでなく、追加料金やお布施など全体の費用を確認しましょう。
死亡届は死亡後7日以内に提出が必要で、多くの場合葬儀社に代行依頼できます。葬儀後は健康保険の資格喪失手続きや葬祭費の申請、年金手続き、名義変更など様々な手続きが必要です。特に葬祭費・埋葬料は申請しなければ支給されないため、忘れずに手続きしましょう。

