戒名がないと成仏できない?つけない割合の実態と費用相場・納骨の可否を解説

数十万円の戒名料を提示され、本当に必要なのか判断がつかないまま返事を保留している。そんな状況で調べ始めた方が多いはずです。

結論から言えば、戒名がなくても成仏できます。より正確に言うと、「戒名がないと成仏できない」と説いている宗派は、公式には確認できません。曹洞宗・天台宗・浄土宗・日蓮宗・臨済宗・浄土真宗の公式サイトを調べても、そうした記述は見当たりませんでした。

一方で、戒名がないことで現実に困る場面はあります。それは霊的な問題ではなく、菩提寺の墓に納骨できるか、親族の理解を得られるかという手続きと人間関係の問題です。

この記事では、戒名の本来の意味、つけない人の割合として何がわかっているのか、戒名なしで納骨できる場所、費用の相場と抑え方までを、確認できた一次情報に基づいて整理します。

目次

戒名がないと成仏できないのか

「戒名がないと成仏できない」と説く宗派の公式見解はない

浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、曹洞宗、天台宗、浄土宗、日蓮宗、臨済宗妙心寺派の公式サイトを確認しましたが、「戒名がなければ成仏できない」と説明している宗派はありませんでした

浄土真宗本願寺派は本願寺派公式サイトのよくあるご質問で「浄土真宗では”戒名”という言い方はしません」と明記し、名前の有無を往生の条件としていません。

インターネット上には「戒名がないと六道輪廻をさまよう時間が長くなる」「故人が迷いや苦しみを感じる」といった説明が流通していますが、これらを裏づける宗派の公式見解や教義上の根拠は確認できませんでした。戒名を授かることで「この世の業や執着から解放される」という説明も同様です。曹洞宗は戒名を「仏さまの弟子となった証」、天台宗は「戒を受け終わった証」と説明しており、**解放ではなく「証」**という位置づけです。

つまり、戒名をつけるかどうかの判断材料は、宗教的な不利益ではありません。納骨先が受け入れるか、親族が納得するか、費用を負担できるかという現実的な条件です。

戒名は本来、戒を受けた証として生きている人に授かる名前

戒名は「亡くなった人が悟りを開いた姿を示す名前」ではありません。曹洞宗のよくあるご質問は、次のように説明しています。

戒名とは、戒を受け仏弟子となったものが授かる名前です。信仰の証として、戒名をいただくのです

同じく曹洞宗は「十六条の戒を受けたときにいただくお名前が『戒名』でありますから、本来は、仏弟子としての自覚が生まれた時にいただくもの」としています。天台宗のQ&Aも「仏教に帰依し、仏様の弟子として、その教えにしたがって戒を守る誓いをたてた者に与えられる名前」と定義しています。

辞典類の記述も一致しており、『デジタル大辞泉』は「仏門に帰依して受戒した出家・在家に与えられた法名」、『日本大百科全書』は「戒を受けて仏門に入った者に与えられる名」としています。

戒名はもともと、生きている人が受戒したときに授かるものだったという点を押さえておくと、以降の判断がしやすくなります。

死後に授ける形が広まったのは江戸時代の檀家制度以降

天台宗のQ&Aは、古くは皇族・貴族が生前に受戒して戒名を持つことが流行し、江戸時代の檀家制度によって死後の戒名が庶民にまで普及したと説明しています。『山川日本史小辞典』も「死者の戒名を墓石や位牌に書くのが広く定着するのは江戸時代頃から」としています。

つまり、日本人が全員戒名を持つようになったのは、宗教的な必然ではなく、江戸時代の寺請制度という行政のしくみに由来します。「昔からずっとそうだった」という前提で判断する必要はありません。

戒名をつけない人の割合はどれくらいか

戒名の有無を集計した全国統計は存在しない

「戒名をつけない人は何%か」を知りたい方は多いのですが、この問いに答えられる全国統計は現時点で存在しません

📊 確認した統計・調査と、その公表範囲

  • 文化庁「宗教統計調査」は宗教法人数・教師数・信者数のみを扱い、戒名に関する項目がない
  • 厚生労働省「衛生行政報告例」は埋葬・火葬の件数のみ
  • 鎌倉新書「お葬式に関する全国調査」(第7回)は有効回答2,000件の大規模調査だが、戒名の有無に関する設問・数値は公表していない
  • 「安心葬儀」(エス・エム・エス)の2023年調査は喪主経験者3,897人が対象で、寺院・宗教者への費用の平均額22万8,741円は公表しているが、戒名の有無の割合は公表していない
  • 日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」は報告書が有料頒布で、該当数値は公開されていない

⚠️ 注意点:Web上には「戒名をつけない人は◯%」という数字が出回っていますが、調査主体・実施年・母集団のいずれかが不明なものが少なくありません。数字を見かけたら、この3点が示されているかを確認してください。

意識調査でわかっていること

実際に戒名をつけたかどうかではなく、「必要と思うか」を尋ねた意識調査であれば、次の2件が確認できました。

調査主体実施時期対象・回答数結果
ユニクエスト「団塊世代の終活事情」2013年4月10〜70代男女966名/有効回答860名「戒名は必要ない」全体15.0%(60代25.8%、50代20.0%、70代19.4%)
保険クリニック調査年不明40〜60代男女600名戒名について54.2%が「省略してもよい」

ただし、どちらも慎重に扱う必要があります。ユニクエスト調査は13年前のもので、現在の意識をそのまま表しているとは言えません。保険クリニック調査は二次情報経由でしか確認できず、実施年が特定できませんでした。

「過半数が戒名を不要と考えている」と断定できるデータは、現時点では見当たりません。そして、意識調査の数字は「実際に戒名をつけなかった人の割合」とは別物です。

戒名をつけない理由として挙げられる3つの背景

統計はなくても、戒名を見送る判断が増えているとする指摘は葬儀の現場から一貫して出ています。背景として挙げられるのは次の3点です。

💰 経済的負担の軽減

戒名料は数万円から百万円以上まで幅があり、葬儀全体の費用を抑えたい事情から見送るケースがあります。特に若い世代では、金額に見合う価値を感じられないという反応が強い傾向があります。

🌐 宗教観の変化

檀家制度との結びつきが希薄になり、菩提寺を持たない世帯が増えました。仏式で葬儀を行っても、戒名の宗教的意義を実感しないまま費用だけが発生する構図に、疑問を持つ人が増えています。

🏠 葬儀形式の多様化

家族葬や直葬など、儀礼を簡素化した形式が広がりました。宗教儀式を最小限にする方針を取れば、戒名も選択項目のひとつになります。

家族葬・直葬の増加と戒名の関係

鎌倉新書が2026年2月27日〜3月3日に実施した第7回調査(有効回答2,000件、直近2年以内に喪主を経験した40歳以上の男女)では、葬儀形式の内訳は次のとおりでした。

葬儀形式割合費用の平均
家族葬47.0%96万3,900円
一般葬30.2%122万100円
一日葬11.9%74万4,300円
直葬・火葬式10.8%49万5,600円

家族葬と直葬・火葬式で全体の約6割を占めています。ただし、この調査でも葬儀形式別に戒名の有無を集計した結果は公表されていません。「直葬だから戒名なし」と一律に言えるデータはなく、直葬でも僧侶を呼んで戒名を授かるケースは実際にあります。

葬儀形式そのものの違いについては、一日葬と直葬の違いを比較した記事で費用と流れを整理しています。

戒名がない場合に実際に起きること

戒名がないことで生じるのは、宗教的な不利益ではなく、手続きと人間関係の問題です。順に見ていきます。

菩提寺の墓に納骨できないことがある

最も現実的な問題がこれです

菩提寺とは、先祖代々の供養を任せ、檀家として関係を持っている寺のことです。菩提寺の墓に納骨する予定があるなら、その寺の宗旨に沿った戒名を求められる可能性が高くなります。寺には過去帳という記録があり、そこに載らない名前では納骨法要や年忌法要の執行で齟齬が生じるためです。

⚠️ 判断の分かれ目

  • 菩提寺がある → 葬儀前に必ず相談する。事後の交渉は関係を悪化させやすい
  • 菩提寺がない → 納骨先を宗教不問の施設にすれば、戒名なしで問題なく進む

菩提寺があるかどうかがわからない場合は、菩提寺と檀那寺の違いと確認方法をまとめた記事で、檀家関係の有無を判断する手順を解説しています。

位牌は俗名で作れる

戒名がなくても位牌は作れます。生前の氏名で作る位牌を俗名位牌と呼びます。

📝 俗名位牌の書き方

  • 表面:生前の氏名(フルネーム)の下に「之霊位(のれいい)」を添えるのが一般的
  • 裏面:没年月日と、享年(数え年)または行年(満年齢)
  • 梵字や仏教装飾の文字は入れない

氏名のみを刻む形、表面に没年月日まで入れる形もあり、開眼供養も必須ではありません。費用は本位牌で1万円程度からが目安です。

位牌そのものを作らない選択もあります。骨壺での手元供養(1千円〜7万円程度)、遺骨アクセサリー(1万円〜)、ミニ仏壇(3万〜10万円)、法名軸(2千円〜5万円)などが選択肢になります。なお浄土真宗では、位牌ではなく過去帳や法名軸を用いるのが一般的とされています(宗派の公式見解ではなく実務慣行です)。

墓石・墓誌には俗名を刻む

墓石や墓誌への刻字を規制する法律はありません。戒名がない場合は本名(俗名)を刻むのが一般的で、公営墓地や民営霊園であれば刻字の内容は原則として自由です。

ただし寺院墓地では、寺の使用規則や慣行が優先されます。刻字の内容も含めて、契約している寺の規則を確認してください。

親族の間で意見が分かれやすい

戒名をめぐるトラブルの多くは、故人の親世代や兄弟姉妹との認識の差から生じます。喪主が費用面から見送った判断を、後から親族が問題視するパターンです。

⚠️ もめやすい状況

  • 故人の兄弟姉妹に檀家意識が強い人がいる
  • 葬儀費用を負担していない親族が戒名を強く主張する
  • 先祖代々の墓に納骨する予定がある

戒名は葬儀後でも授かれます。親族間で意見が割れているなら、その場で結論を出さず保留するのも現実的な選択です。

戒名なしで納骨・埋葬できる場所

埋葬先別・戒名の要否一覧

納骨先によって、戒名が必要かどうかは大きく変わります。

埋葬先戒名なしでの可否補足
寺院墓地(菩提寺)寺の判断による俗名納骨を認める寺もあるが、宗旨に沿った戒名を求める寺もある
公営墓地可能申込資格に宗教・戒名の条件がない
民営霊園原則可能「宗旨宗派不問」の意味を要確認
納骨堂可能な施設が多い俗名納骨可と明記する施設が増えている
永代供養墓可能な施設が多い同上
樹木葬可能な施設が多い寺院運営の場合は要確認
散骨戒名は無関係墓地埋葬法の規定外

公営墓地については、たとえば東京都霊園条例第6条が定める使用者の資格は、都内に住所を有すること、祖先の祭祀を主宰すべき者であること、他の埋蔵施設の使用許可を受けていないことの3点のみです。宗教・宗派・戒名に関する条件は一切ありません

菩提寺は戒名がないことを理由に納骨を断れるのか

これには法的な整理があります。墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)第13条は、墓地・納骨堂等の管理者は埋葬・埋蔵・収蔵の求めを受けたとき「正当の理由がなければ」これを拒んではならないと定めています。

そして旧厚生省が出した墓地、埋葬等に関する法律第十三条の解釈について(昭和35年3月8日 衛環発第8号)は、内閣法制局の見解として次のように述べています。

依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当の理由」によるものとはとうてい認められないであろう

ただし同じ通知は、重要な留保も置いています。

埋葬又は埋蔵行為自体について依頼者の求めを一般に拒んではならない旨を規定したにとどまり、埋葬又は埋蔵の施行に関する典礼の方式についてまでも、依頼者の一方的な要求に応ずべき旨を定めたものと解すべきではない

つまり、戒名がないことだけを理由に納骨そのものを断ることは難しい一方、納骨法要をどの典礼で行うかは寺側に裁量があるという構造です。法律を盾に押し切っても、関係が壊れれば以降の法要が立ち行きません。現実的には、事前の話し合いで折り合いをつけることが唯一の解決策になります。

樹木葬で戒名は必要か

樹木葬は宗旨・宗派を問わない施設が一般的で、戒名は多くの場合任意です。寺院が運営する樹木葬でも、戒名の授与を利用条件としている募集要項の実例は確認できませんでした。

たとえば東京の専求院は、永代供養墓について「宗旨・宗派は問いません」「檀家契約の必要はございません」「俗名での納骨も可能」と明記しています。

⚠️ 確認すべきは戒名より「宗旨宗派不問」の意味

  • これまでの宗派は問わないが、購入後はその寺院の檀家になる必要がある
  • 他寺院との関係は認めるが、墓地内での供養はその寺院が行う
  • 墓前の供養もどの寺院に依頼してもよい
  • 仏教以外(キリスト教・神道など)は不可の場合がある

同じ「宗旨宗派不問」でも中身がこれだけ違うため、申込前に募集要項で檀家加入の要否を確認してください。費用の内訳やタイプ別の違いは、樹木葬の費用相場を解説した記事で整理しています。

納骨堂・永代供養墓・散骨での扱い

納骨堂と永代供養墓は、宗教不問・檀家契約不要・俗名納骨可を明記する施設が増えており、戒名なしでもほぼ問題ありません。散骨は墓地埋葬法に規定がなく、戒名とは無関係です。

将来の改葬(墓の引っ越し)を考えている場合は、契約時に俗名での納骨が可能かを書面で確認しておくと、後の選択肢が狭まりません。

戒名をつけない宗派と呼び方の違い

宗派によって、死後に授かる名前の呼び方も位置づけも異なります。

浄土真宗は「法名」

浄土真宗では**「法名」(ほうみょう)**と呼び、戒名という語を使いません。戒律を立てないため、受戒を前提とする戒名とは考え方が異なるからです。本願寺派は公式FAQで「戒名は自力修行をする人のための名前であり、浄土真宗の教えとは異なる」と説明しています。

法名は本来、**帰敬式(おかみそり)**を受けた際に門主から授与されるものです。

🔖 法名の特徴

  • 本願寺派の「法名の授与に関する寺達」(平成24年 寺達第13号)は「漢字2字とし、『釋』の字を冠する」と規定
  • 位号(信士・居士など)は付けない
  • 阿弥陀仏の前ではすべての人が平等であるという教えを反映している

なお、女性に「釋尼」を用いる形は旧来の慣行で、現行の規程に釋尼の定めはありません。院号については本願寺派の院号授与規程が別に定めており、宗門が授与した院号以外の使用を禁止しています。

日蓮宗は「法号(日号)」

日蓮宗では「法号(ほうごう)」と呼びます。日蓮宗ポータルの仏事Q&Aは「日蓮聖人の教えを信じる者が、み仏の世界へおもむくにあたって、授けられる名前(法名、戒名ともいいます)」と説明しています。

📿 法号の特徴

  • 「日」の文字を含む日号が用いられる場合がある
  • 男性には「法」、女性には「妙」の字が用いられることが多い
  • 生前に授かる逆修法号を案内する寺院もある

ただし、生前授与を勧める寺院があるのは事実でも、日蓮宗ポータル内の寺院記事は「法号をいただくのは亡くなった後が最も一般的」としています。生前に受けるのが主流というわけではありません。

曹洞宗・浄土宗・臨済宗・天台宗・真言宗の考え方

宗派呼称公式の説明
曹洞宗戒名十六条の戒を受けたときにいただく名。葬儀は釈尊の弟子になる儀式と位置づける
天台宗戒名(=法名)戒を受け終わった証。「仏弟子としての大切な名前は法名の二文字」とし、生前授戒を本来の在り方と説明
浄土宗戒名五重相伝を受けた際に、戒名の一つである「誉号」が授与される
臨済宗戒名大本山妙心寺のFAQは「妙心寺では、生前戒名の授与はありません。菩提寺のご住職へご相談下さい」と明記
真言宗戒名「院号+道号+戒名+位号」の構成。位牌で戒名の上に大日如来を表す梵字「ア」を冠する場合がある

いずれの宗派も、その名前がなければ成仏できないとは公式に説明していません。共通しているのは、戒名が「仏弟子になった証」であるという位置づけです。

戒名の構成と院号・位号の意味

院号・道号・戒名・位号の4つの部分

一般に戒名と呼ばれているものは、4つの部分でできています。

部分位置意味
院号(院殿号)最上部寺院への貢献や社会的地位に応じて付される。もとは天皇・貴族の称号
道号戒名の上雅号・別名にあたる部分
戒名(狭義)中核本体となる2文字。これが本来の戒名
位号末尾信士・居士などの尊称

たとえば「清雲義弘信士」であれば、道号が「清雲」、戒名が「義弘」、位号が「信士」です。

注目したいのは、天台宗が「仏弟子としての大切な名前は法名の二文字」とし、道号や院号を後世の付加と説明している点です。中核は2文字の部分であり、その前後に付く要素は本来の戒名ではありません

位号の序列に定説はない

浄土宗総合研究所編『新纂浄土宗大辞典』の「位号」の項によれば、位号は本来、信仰や仏教知識の深さを表す称号でしたが、現在は「死後に贈る諡号と理解されている」とされます。

在家信者向けの位号には、居士・大姉、善士・善女、信士・信女、禅定門・禅定尼などがあり、年齢に応じて童子・童女(7〜15歳未満)、孩子・孩女や嬰児・嬰女(6歳以下)、水子が用いられます。

ここで重要なのは、同辞典が**「各寺院の慣例や地域習慣により異なるため定説はない」と明記している**ことです。葬儀社や仏事メディアが示す「大居士>居士>信士」といったランク表は一様ではなく、絶対的な序列として受け取るべきものではありません

院号はもともと天皇・貴族に贈られた称号だった

同辞典の「院号」の項によれば、院号の起源は嵯峨天皇が譲位して「嵯峨院」と称したことに遡ります。当初の対象は天皇と三后(皇后・皇太后・太皇太后)のみでした。

その後、摂関家に広がり(藤原兼家の薨去後に「法興院」と称したのが最初)、将軍家では足利尊氏が没後に「等持院殿」と号したことから武家に及び、江戸時代以降に民衆まで広く用いられるようになりました

院殿号は皇室と区別するために「殿」を付したとみられますが、実際には院殿号のほうが上位とみなされるようになり、院号は第二位の称号になったとされています。

院号に高額な料金を提示されたときは、この経緯が判断材料になります。院号は本来、金額と引き換えに得るものではなく、寺院や社会への貢献に対して贈られる称号でした。

戒名料の相場と費用を抑える方法

宗派・位号別の相場は葬儀社が示す「目安」

戒名にかかる費用は「お布施」として僧侶に渡しますが、実務上は「戒名料」として扱われます。現在流通している相場は次のとおりです。

スクロールできます
宗派信士・信女居士・大姉院信士・院信女院居士・院大姉
浄土宗30〜40万円50〜60万円70万円〜
真言宗・天台宗30〜50万円50〜70万円80万円〜100万円〜
曹洞宗30万円〜50〜70万円100万円〜100万円〜
臨済宗30〜50万円50〜80万円100万円〜
日蓮宗30〜50万円100万円〜
浄土真宗20万円〜(釋・釋尼)50万円〜(院釋・院釋尼)

⚠️ この表の読み方

  • これは**相続専門税理士法人レガシィや小さなお葬式などが示す「目安」**であり、実態調査の結果ではありません
  • 提示元によって数値が異なります。たとえば天台宗について、真言宗と同額とするサイトがある一方、信士・信女5〜20万円と大幅に低い額を示すサイトもあります
  • 実際の支払額を調べた調査はほとんどなく、確認できた唯一のもの(もしもドットネット、2004年、440名)では**戒名代「5万円以内」が最多で30.45%**でした

つまり、提示されている「相場」と実際に支払われている額には乖離がある可能性があります。金額に納得できない場合は、菩提寺に率直に相談する余地があります。読経料を含めた葬儀全体のお布施については、お布施の相場と適正金額をまとめた記事で内訳を解説しています。

戒名授与サービスは2万円台から

菩提寺を持たない人向けに、戒名だけを授与するサービスが複数あります。

事業者・寺院価格ランクによる価格差
てらくる(小さなお葬式)信士・信女2万円/居士・大姉6万円/院居士・院大姉20万円あり
よりそうお坊さん便20,000円〜単一料金体系
円宗院(神奈川)30,000円(一律)なし
NKS日本故人生前戒名推進会19,000円〜あり

菩提寺経由(数十万円、金額はお布施として不定)と、Web完結型の授与サービス(2万円前後、定価制)の間には10倍以上の開きがあります。鎌倉新書の調査で、喪主の仏事の困りごとの最多が「お布施の相場・マナーがわからない」だったことが、この不透明さの背景を示しています。

⚠️ 利用の前提:これらのサービスは各社とも「菩提寺がある方は菩提寺にご相談ください」と自ら注記しています。菩提寺がありながら外部で戒名を受けると、納骨の段階で必ず問題になります。サービスの比較検討は、僧侶派遣サービスの料金と評判をまとめた記事が参考になります。

生前戒名という選択肢

生前に受戒して戒名を授かる方法もあります。天台宗は「生前に授戒して仏様を心に頂いて生活することが本来の在りかた」と説明しており、教義的にはむしろこちらが本筋です。日蓮宗でも逆修法号を案内する寺院があります。

一方、臨済宗大本山妙心寺は公式FAQで「妙心寺では、生前戒名の授与はありません」と明記しており、宗派・寺院によって対応が分かれます。生前戒名を検討するなら、まず所属する宗派と寺院に確認してください。

費用については、小さなお葬式が「相場5万円〜40万円、逝去後より安くなる傾向」としていますが、これは1社が示す目安で、複数の情報源による裏づけはありません。

なお、生前戒名の費用は葬式費用ではないため、相続税の控除対象にはなりません

戒名を自分でつけてもよいのか

戒名の授与や使用を規制する法律はありません。位牌や墓石への刻字も私的な行為であり、法的な制限はかかりません。

ただし、実務上は次の整理になります。

  • 宗派の建前:戒名は授戒の儀式に伴って僧侶が授けるもの。儀式を経ない自作は、宗派の考え方では戒名とは呼べません
  • 宗門ルール:浄土真宗本願寺派は院号授与規程で「宗門が授与する院号以外の使用を禁止」と定めています
  • 菩提寺がある場合:相談なしの自作は受け入れられない可能性が高く、寺の過去帳に記録が残らないため、位牌への記載や法要の執行で齟齬が生じます
  • 菩提寺がない・無宗教で送る場合:自作した名前を使っても実務上の支障は生じにくくなります

判断の分かれ目は、やはり菩提寺の有無です

戒名料は相続税の葬式費用として控除できる

国税庁のタックスアンサーNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」は、控除できる費用として「葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用」を挙げています。根拠となるのは相続税法第13条と、相続税法基本通達13-4・13-5です。

国税庁の公表資料に「戒名料」という語は出てきませんが、葬儀に伴って支払う戒名料はこの項目に含まれると解するのが一般的な取扱いです。

⚠️ 控除できないもの

  • 香典返しの費用
  • 墓石・墓地の購入費や借入料
  • 初七日など法事のための費用

四十九日以降に法要の一環として戒名を授かった場合は、「法事のための費用」に該当して控除対象外となる可能性があります。判断に迷う場合は税理士に確認してください。

無縁仏に戒名はつくのか

無縁仏に法律上の定義はない

「無縁仏」という言葉を定義する法令は存在しません。慣用的な用法です

法令上定義があるのは「無縁墳墓等」で、墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条により「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂」と定められています。行政実務では「引取り手のない遺骨(無縁遺骨)」という表現が使われます。

引き取り手のない遺骨を自治体はどう扱うか

墓地埋葬法第9条は、死亡者の埋葬・火葬を行う者がないとき等は市町村長がこれを行うと定めています。

総務省行政評価局の「遺留金等に関する実態調査」(令和5年3月)に関する報道によれば、令和3年10月末時点で全国の市区町村が保管する引取り手のない遺骨は約6万柱にのぼり、そのうち約9割は身元が判明していながら親族に引取りを拒否されたものとされています。厚生労働省も「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引」を公表し、自治体の実務を整理しています。

自治体の事務には宗教的中立性が求められるため、自治体が戒名を授けることはありません。火葬後は合祀墓や納骨堂に収蔵されるのが一般的な流れです。

無縁墳墓の改葬には官報公告と1年間の掲示が必要

無縁墳墓等の改葬には、通常の改葬より慎重な手続きが求められます。墓地埋葬法施行規則第3条により、官報に掲載し、かつ立札に1年間掲示して公告することが必要です。

総務省行政評価局「墓地行政に関する調査」(令和5年9月)では、次の実態が報告されています。

  • 公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち、無縁墳墓等が1区画以上ある(疑いを含む)市町村は58.2%。人口30万人以上の市町村では78.9%
  • 縁故者の把握率が2割未満の団体が80.7%
  • 過去5年に無縁改葬・墓石撤去に着手した実績があるのは6.1%にとどまる

「無縁」の判断基準は市町村によってまちまちで、管理料の滞納期間、使用者死亡からの経過年数、墓参の状況など、基準が統一されていない実態も指摘されています。

施餓鬼会などの合同供養

寺院が行う施餓鬼会(せがきえ/施食会)は、餓鬼道の衆生や有縁無縁のすべての精霊に食を施す法要で、「三界万霊」を対象とします。寺院の本堂や墓地に「三界万霊」と刻んだ塔や位牌が置かれているのは、このためです。

つまり、戒名の有無にかかわらず供養の対象になります。ただし、どの程度の寺院が実際に無縁仏を対象とした合同供養を行っているかを示す統計は確認できませんでした。個別の寺院がお盆やお彼岸に「有縁無縁精霊供養」を行う旨を案内している例は多く見られます。

まとめ

戒名がなくても成仏できます。というより、「戒名がないと成仏できない」と説いている宗派の公式見解は確認できません。戒名は本来、生きている人が戒を受けた証として授かる名前であり、死後に授ける形が庶民に広まったのは江戸時代の檀家制度以降です。

戒名をつけない人の割合については、それを集計した全国統計は存在しません。意識調査は2件確認できましたが、いずれも古いか調査年が不明で、「過半数が不要と考えている」と断定できる根拠にはなりません。

判断材料になるのは、宗教的な影響ではなく現実的な条件です。菩提寺があるなら事前相談が不可欠で、菩提寺がなければ公営墓地・納骨堂・永代供養墓・樹木葬など、戒名なしで受け入れる納骨先が多数あります。戒名料も、菩提寺経由の数十万円から授与サービスの2万円台まで幅があります。

戒名は葬儀後でも授かれます。迷っているなら、その場で結論を出さずに保留することも選択肢のひとつです。

戒名に関するよくある質問

49日を過ぎて戒名がない場合はどうなりますか?

成仏できないということはありません。49日を過ぎてから戒名を授かることも可能なので、必要と感じた時点で菩提寺や僧侶に相談してください。

葬儀のあとから戒名を授かることはできますか?

できます。菩提寺がある場合は菩提寺に、ない場合は納骨予定の寺院や戒名授与サービスに相談します。ただし四十九日以降に授かった場合は、相続税の葬式費用として控除できない可能性があります。

位牌を作らないとどうなりますか?

供養の対象や場所がなくなるだけで、成仏に影響するものではありません。写真や思い出の品、手元供養、法名軸など、位牌に代わる形での供養も一般的になっています。

戒名・法名・法号は何が違うのですか?

宗派による呼び方の違いです。浄土真宗は「法名」、日蓮宗は「法号」、曹洞宗・真言宗・浄土宗・臨済宗・天台宗は「戒名」と呼びます。天台宗のように戒名と法名を同義とする宗派もあります。

他宗派の戒名でも納骨できますか?

公営墓地・民営霊園・宗教不問の納骨堂であれば問題ありません。寺院墓地の場合は、旧厚生省の通知により他宗教の信者であることのみを理由とする埋葬拒否は認められないとされていますが、法要の典礼については寺側に裁量があるため、事前の相談が必要です。

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参考サイト・出典:

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