おひとり様の身じまいとは?準備すべきことと費用相場を徹底解説

もし明日、自分が突然倒れたら——誰が葬儀を手配してくれるのか遠縁の親族に大きな負担をかけてしまうのではないか。孤独死のニュースを見るたびに不安を感じながらも、何から手をつければいいか分からず、先延ばしにしてしまっていませんか?

2050年には5世帯に1世帯が高齢者の一人暮らしになると予測される日本。おひとり様が直面するのは、孤独死、身元保証人不在、望まない財産相続という3つの深刻なリスクです。身じまいをしないと、疎遠な親族にも遺品整理や各種手続きで大きな迷惑をかけてしまいます。

本記事では、国立社会保障・人口問題研究所などの統計データに基づいておひとり様の身じまいで準備すべき10のこと詳細な費用相場(30万円〜500万円)を徹底解説。エンディングノート、遺言書、身元保証人の確保、死後事務委任契約など、必要な準備を網羅し、年代別の進め方信頼できるサービスの選び方まで実践的に紹介します。

この記事を読むことで、漠然とした不安が具体的な行動計画に変わり、安心して余生を過ごせるようになります。身じまいは後ろ向きな活動ではなく、自分らしい最期を主体的に準備する前向きな取り組みです。すべてを一度に完璧にやる必要はありません——できることから少しずつ始めましょう。

目次

身じまい(身終い)とは?言葉の意味と終活における位置づけ

辞書的な「身じまい(身仕舞い)」の意味

辞書を引くと「身じまい(身仕舞い)」は「身なりをつくろうこと」「化粧して美しく着飾ること」という意味で、「身じまいして出かける」といった使い方をします。読み方は「みじまい」です。

「身支度(みじたく)」と似た意味で使われる言葉で、外出前に服装を整えたり、身だしなみを確認したりする行為を指す伝統的な日本語表現です。

終活における「身じまい(身終い)」の意味

一方、終活の文脈では「身じまい」は全く異なる意味で使われています。ここでの「身じまい」は**「人生の最期に向けて身の回りを整理し、自分らしい終わり方を準備する活動」**を指します。

「身終い」という表記が使われることもあり、これは「身を終える準備」という意味が込められています。具体的には、単身者が自分の死後に備えて、葬儀・お墓・財産・遺品などについて事前に決めておくことを意味します。

📌 「おひとり様の身じまい」の定義: 家族や身近な親族に頼ることができない単身者が、自分の人生の最期と死後について主体的に準備し、周囲への負担を最小限にしながら、自分らしい終わり方を実現するための活動

身じまいと身支度の違い

混同されやすい言葉ですが、明確な違いがあります。

項目身じまい(身仕舞い)身支度(みじたく)
意味身なりをつくろうこと外出の準備をすること
終活での意味人生の最期の準備(使用されない)
使用場面日常生活・終活日常生活のみ
表記のバリエーション身仕舞い、身終い身仕度

近年では、「身じまい」が終活用語として定着しつつあり、特に単身高齢者の増加を背景に、その重要性が注目されています。

おひとり様に身じまいが必要な理由

単身高齢者の増加という社会背景

日本では、単身高齢者が急速に増加しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、以下のような状況が予測されています。

📊 単身高齢者の増加データ

  • 2020年:65歳以上の単独世帯は738万世帯(全世帯の13.2%)
  • 2050年:65歳以上の単独世帯は1,084万世帯(全世帯の20.6%)に増加見込み
  • これは、日本の5世帯に1世帯が高齢者の一人暮らしという状況

この背景には、生涯未婚率の上昇、離婚の増加、配偶者との死別後の単身生活、子どもとの別居など、さまざまな要因があります。また、年間死亡者数も2040年には166.5万人でピークを迎えると予測されています。

おひとり様が直面する3つのリスク

身じまいをしないまま放置すると、おひとり様は以下の深刻なリスクに直面します。

孤独死のリスク

東京都区部における65歳以上の孤独死数は、2013年の2,869人から2018年には3,867人へと、5年間で約1,000人増加しています。

⚠️ 孤独死の問題点

  • 発見が遅れ、遺体の状態が悪化する可能性
  • 近隣住民への影響(臭気・衛生問題)
  • 遺品整理や住居の原状回復に高額な費用が発生
  • 特殊清掃が必要になるケース

内閣府の調査では、60歳以上の約3分の1が孤独死を「身近な問題」として感じており、多くの単身高齢者が不安を抱えています。

身元保証人・身元引受人が確保できないリスク

元気なうちは問題ありませんが、入院や介護施設への入居時には身元保証人が必要になります。

🏥 身元保証人が必要な場面

  • 病院への入院時
  • 介護施設・有料老人ホームへの入居時
  • 賃貸住宅の契約時
  • 手術や医療行為の同意時

身元保証人を確保できないと、必要な医療や介護が受けられない可能性があります。

希望しない人に財産が相続されるリスク

遺言書を残さない場合、財産は法定相続人に相続されます。相続人がいない場合は最終的に国庫に帰属します。

💰 財産相続の問題

  • 親しい友人や支援してくれた人に財産を残せない
  • 希望しない遠縁の親族に財産が渡る可能性
  • 社会貢献のための寄付ができない
  • 自分の意思が反映されない

調査によると、おひとり様の90.6%が生前・死後の手続きについて自ら備えたいと考えているにもかかわらず、実際に備えている人は1割程度に留まっています。

周囲への負担を最小限にするために

身じまいをしないと、たとえ疎遠であっても親族や知人に大きな負担がかかります。

👥 周囲にかかる負担

  • 遺体・遺骨の引き取り対応
  • 遺品整理の実施(費用と労力)
  • 賃貸住宅の退去手続き
  • 公共料金・各種サービスの解約
  • 相続手続きへの対応

最も不安に感じる死後の事務手続き

  1. 死後事務(53.8%):死亡届、各種解約手続き
  2. 遺品整理:生涯かけて築いた所有物の処分
  3. 金融手続き:銀行口座の清算、金融機関への連絡

これらの不安を解消し、残された人々の負担を軽減するために、身じまいは極めて重要な活動となっています。

おひとり様の身じまいで準備すべき10のこと

生前整理(身の回りの整理)

生前整理とは、生きているうちに身の回りの物を整理整頓することです。

生前整理のメリット

  • 日常生活が快適になる
  • 必要な物が見つけやすくなる
  • 遺品整理の負担を大幅に軽減
  • 自分の人生を振り返る機会になる

💰 生前整理の費用

  • 自分で行う場合:自治体への処分費用のみ(数千円程度)
  • アドバイザーに相談:日額1万円程度
  • 業者に依頼する場合:
    • 1K:3万円~8万円
    • 2DK:12万円~35万円
    • 3LDK:10万円~50万円

📝 整理のポイント: 部屋ごと、または衣類・食器などカテゴリごとに仕分けを進めます。「残すもの」と「処分するもの」を明確に分け、処分品は適切に廃棄またはリサイクルします。

エンディングノートの作成

エンディングノートは、自分に万が一のことがあったときに備えて、家族や信頼できる人に伝えたい情報をまとめておくノートです。

📖 記載する主な内容

  • 基本情報(本籍、マイナンバー、保険証番号)
  • 財産情報(預貯金、不動産、株式、負債)
  • 医療・介護の希望(延命治療の可否、臓器提供の意思)
  • 葬儀・お墓の希望
  • デジタル情報(SNSアカウント、パスワード)
  • 友人・知人の連絡先
  • 大切な人へのメッセージ

💰 エンディングノートの費用

  • 市販品:500円~2,000円程度
  • 高級品:数千円~数万円
  • 無料配布:自治体、葬儀社、金融機関などで入手可能
  • アプリ:無料~有料まで多数

⚠️ 注意点: エンディングノートには法的効力がありません。財産の分配など法的拘束力が必要な事項は、別途遺言書を作成する必要があります。

医療・介護の希望を決めておく

判断能力があるうちに、医療や介護についての希望を明確にしておくことが重要です。

🏥 決めておくべき医療・介護の事項

  • 延命治療の希望(人工呼吸器、胃ろうなど)
  • 終末期医療の方針
  • 臓器提供・献体の意思
  • 希望する介護施設のタイプ
  • 入院・入居時の身元保証人

これらの希望をエンディングノートに記載し、かかりつけ医や信頼できる人に伝えておきましょう。

葬儀・お墓の準備

自分の葬儀やお墓について、具体的な希望を決めておくことで、残された人の負担を軽減できます。

葬儀で決めておくこと

  • 葬儀の形式(一般葬、家族葬、直葬など)
  • 葬儀の規模と予算
  • 希望する葬儀社
  • 宗教形式(仏教、神道、キリスト教、無宗教など)
  • 参列してほしい人のリスト

お墓で決めておくこと

  • 納骨方法(墓地、納骨堂、樹木葬、散骨、手元供養など)
  • お墓の場所
  • 墓じまいの希望
  • 永代供養の検討

葬儀社との事前相談や生前契約を検討することで、希望通りの葬儀を実現しやすくなります。

遺言書の作成

遺言書は、自分の財産を誰にどのように分配するかを法的に定める文書です。

📜 遺言書の種類と費用

種類費用メリットデメリット
自筆証書遺言ほぼ無料(紙とペン代のみ)<br>法務局保管:3,900円手軽に作成できる<br>費用が安い形式不備で無効になる可能性<br>検認手続きが必要
公正証書遺言公証人手数料:4万円~10万円<br>専門家依頼:追加8万円~20万円法的に確実<br>検認不要<br>紛失・改ざんの心配なし費用が高い<br>証人2名が必要

💡 おひとり様に推奨: 公正証書遺言は費用がかかりますが、法的に確実で紛失のリスクがないため、身近に頼れる家族がいないおひとり様には特に推奨されます。

身元保証人・身元引受人の確保

入院や施設入居時に必要な身元保証人を事前に確保しておくことが重要です。

🤝 身元保証人の役割

  • 医療費・施設利用料の支払い保証
  • 緊急連絡先としての機能
  • 入院・入居の際の保証人
  • 死亡時の遺体・遺骨の引き取り

親族や友人に頼めない場合は、身元保証サービスの利用を検討しましょう。NPO法人や民間企業が提供しており、費用は契約形態によって異なりますが、年会費制や一括払いなどがあります。

死後事務委任契約の検討

死後事務委任契約とは、自分の死後に発生する各種手続きを第三者に委任する契約です。

📋 死後事務の主な内容

  • 死亡届の提出
  • 葬儀・火葬・納骨の手配
  • 医療費・施設利用料の精算
  • 公共料金・各種サービスの解約
  • 賃貸住宅の退去手続き
  • 遺品整理の手配

💰 死後事務委任契約の費用

  • 契約書作成料:約30万円
  • 業務執行報酬:50万円~100万円以上
  • 合計:80万円~130万円程度

⚠️ 注意点: 死後事務委任契約は遺産の相続や分配を扱えません。財産分配には別途遺言書が必要です。

🔍 依頼先: 弁護士、行政書士などの法律専門家、NPO法人、専門会社などに依頼できます。

デジタル遺品の整理

デジタル遺品とは、SNSアカウント、ネットバンキング、暗号資産、サブスクリプションサービスなど、すべてのデジタル資産を指します。

💻 整理すべきデジタル遺品

  • SNSアカウント(Facebook、Instagram、Twitterなど)
  • メールアカウント
  • ネットバンキング・証券口座
  • 暗号資産(仮想通貨)
  • サブスクリプションサービス
  • オンラインストレージ
  • スマートフォン・パソコンのデータ
  • デジタル写真・動画

📝 デジタル終活の進め方

  • 各サービスのID・パスワードをリスト化
  • 削除してほしいアカウント・データを明記
  • 保存してほしいデータを指定
  • エンディングノートにまとめる
  • 信頼できる人に保管場所を伝える

⚠️ デジタル遺品の課題: オンラインサービスの多くは、本人以外のアクセスを禁じています。パスワードや二段階認証がアクセスの障壁となり、相続人でも簡単にはアクセスできません。

財産の管理と把握

自分の財産を正確に把握し、記録しておくことが重要です。

💰 把握すべき財産

  • 預貯金(銀行名、支店名、口座番号)
  • 不動産(土地、建物、マンション)
  • 有価証券(株式、投資信託、債券)
  • 保険(生命保険、損害保険)
  • 年金(公的年金、企業年金、個人年金)
  • 貴重品(貴金属、骨董品、美術品)
  • 負債(ローン、借入金、保証債務)

📊 財産目録の作成: すべての財産と負債をリスト化し、エンディングノートや遺言書に記載します。通帳や権利証などの保管場所も明記しておきましょう。

見守り・訪問サービスの利用

孤独死を防ぐために、定期的な見守りや訪問サービスの利用を検討しましょう。

👀 主な見守りサービス

  • 自治体の見守りサービス
  • 民生委員による訪問
  • 配食サービス(安否確認付き)
  • 電気・ガスの使用状況監視サービス
  • 緊急通報システム
  • オンライン見守りサービス

これらのサービスを利用することで、万が一の際に早期発見される可能性が高まります。

身じまいにかかる費用相場

身じまいには様々な費用が発生します。全体像を把握し、計画的に準備しましょう。

エンディングノート・遺言書の費用

項目費用相場
エンディングノート(市販品)500円~2,000円
エンディングノート(高級品)数千円~数万円
エンディングノート(無料)0円(自治体・葬儀社配布)
自筆証書遺言ほぼ無料~数千円
自筆証書遺言(法務局保管)3,900円
公正証書遺言(公証人手数料のみ)4万円~10万円
公正証書遺言(専門家依頼込み)12万円~30万円

生前整理・遺品整理の費用

間取り費用相場
1K3万円~8万円
1DK・1LDK5万円~12万円
2DK・2LDK9万円~20万円
3DK・3LDK15万円~35万円
4LDK以上20万円~50万円以上

※物量、建物の状況、追加作業の有無により変動します。

身元保証サービスの費用

身元保証サービスの費用は提供者や契約内容によって大きく異なります。

💰 一般的な費用構造

  • 入会金・契約金:10万円~50万円
  • 年会費:1万円~5万円
  • 一括払い:50万円~200万円

サービス内容には、緊急連絡先、入院・入居時の保証、日常生活支援、死後事務などが含まれることが多く、包括的なサポートを提供する事業者ほど高額になる傾向があります。

死後事務委任契約の費用

項目費用相場
契約書作成料10万円~30万円
業務執行報酬50万円~100万円以上
合計60万円~130万円程度

専門家の種類(弁護士、司法書士、行政書士)や委任する業務内容によって費用が変動します。

葬儀費用の相場

葬儀形式費用相場
直葬(火葬のみ)10万円~30万円
一日葬30万円~60万円
家族葬50万円~100万円
一般葬100万円~200万円

※飲食費、返礼品費、お布施などは別途必要です。

トータルで必要な費用の目安

おひとり様が身じまいを完全に準備する場合、最低限必要な費用の目安は以下の通りです。

💰 最小限パターン(30万円~70万円程度):

  • エンディングノート:無料~2,000円
  • 自筆証書遺言:無料~4,000円
  • 直葬の生前契約:10万円~30万円
  • 簡易的な身元保証サービス:年会費数万円

💰 標準的パターン(150万円~250万円程度):

  • エンディングノート:1,000円~2,000円
  • 公正証書遺言(専門家依頼):15万円~30万円
  • 家族葬の生前契約:50万円~100万円
  • 身元保証サービス:50万円~100万円
  • 死後事務委任契約:なし~部分的

💰 充実パターン(300万円~500万円程度):

  • エンディングノート:2,000円
  • 公正証書遺言(専門家依頼):20万円~30万円
  • 家族葬:80万円~120万円
  • 身元保証サービス:100万円~150万円
  • 死後事務委任契約:80万円~130万円
  • 遺品整理・生前整理:10万円~50万円

これらの費用は一括で支払うのではなく、段階的に準備していくことが現実的です。

身じまいをサポートするサービスと制度

身元保証サービス

身元保証サービスは、入院・入居時の保証人や緊急連絡先としての役割を担うサービスです。

🏢 主な提供者

  • NPO法人
  • 民間専門会社
  • 社会福祉協議会

📋 サービス内容

  • 入院・入居時の身元保証
  • 緊急連絡先の提供
  • 日常生活支援(買い物同行、通院付き添いなど)
  • 定期的な安否確認
  • 死後事務の一部対応

⚠️ 注意点: 身元保証サービスは業界規制が不十分で、提供者の信頼性に差があります。契約前に以下を確認しましょう。

🔍 選定時のチェックポイント

  • 事業者の実績・運営年数
  • 契約内容の透明性
  • 解約条件
  • 預託金の保全方法
  • 第三者評価・認証の有無

死後事務委任サービス

死後事務委任サービスは、死後に発生する諸手続きを代行してくれるサービスです。

👨‍⚖️ 主な提供者

  • 弁護士・司法書士・行政書士
  • NPO法人
  • 専門会社(終活サポート会社)

📋 カバーする主な業務

  • 死亡届の提出
  • 葬儀・火葬・納骨の手配
  • 医療費・施設費の精算
  • 公共料金・各種サービスの解約
  • 賃貸住宅の退去・原状回復
  • 遺品整理の手配

💡 選び方のポイント: 契約内容を詳細に確認し、どこまでの業務が含まれるかを明確にしましょう。相続人がいる場合は、相続人との関係についても事前に取り決めておくことが重要です。

おひとりさま信託

おひとりさま信託は、信託銀行が提供する、死後事務費用を確実に確保するための金融商品です。

🏦 仕組み: 一定額の資金(最低300万円程度)を銀行に信託し、死後事務サービスの費用を確実に確保します。銀行は資金管理を担当し、実際の死後事務は提携する専門法人が実行します。

メリット

  • 資金の安全な管理
  • 資金流用のリスク軽減
  • 信頼性の高い金融機関が関与
  • 確実なサービス実行

💰 費用

  • 最低預入金額:300万円~500万円
  • 信託設定報酬:数万円~十数万円
  • 管理報酬:年間数千円~数万円

NPO法人の支援サービス

NPO法人は、営利を目的とせず、地域に根ざした包括的なサポートを提供しています。

🤝 サービスの特徴

  • 身元保証から死後事務まで一貫したサポート
  • 民間企業より低コストな場合が多い
  • 「家族代わり」という包括的アプローチ
  • 地域密着型の支援

💰 料金体系

  • 入会金:数万円~十数万円
  • 年会費:数万円
  • サービス利用時の実費

⚠️ 確認すべきポイント

  • 組織の財政基盤の安定性
  • 対応可能な地域範囲
  • スタッフの専門性
  • 実績・評判

自治体の支援制度

一部の自治体では、おひとり様の終活を支援する制度を提供しています。

🏛️ 代表例:横須賀市のモデル

「エンディングプラン・サポート事業」(2015年開始):

  • 対象:低所得で身寄りのない高齢者
  • 内容:協力葬儀社との低価格(26万円)の生前契約を支援
  • 市が仲介者となり、契約履行を見届ける

「わたしの終活登録」(2018年開始):

  • 対象:全市民(所得制限なし)
  • 内容:緊急連絡先、遺言書保管場所、生前契約先などの情報を市に登録
  • 緊急時、病院や警察からの照会に対し市が情報提供

🔍 自治体の支援を探す方法

  • 市区町村の高齢福祉課・地域包括支援センターに相談
  • 社会福祉協議会に問い合わせ
  • 自治体のホームページで「終活支援」「エンディングサポート」を検索

身じまいを始めるタイミングと進め方

いつから始めるべきか

身じまいに「早すぎる」ということはありません。思い立ったときが始め時です。

推奨される開始時期

  • 40代~50代:体力・気力・判断力が充実している時期
  • 理想的には認知症や判断能力低下前に開始
  • 人生の節目(退職、還暦、子どもの独立など)をきっかけに

📊 調査データ: 実際には、還暦を迎える60代や子どもが就職・結婚する40代~50代に終活を始める人が多い傾向にあります。

⚠️ 早期開始の重要性

  • 認知症発症後は遺言書作成が困難・無効になる可能性
  • 体力が低下すると生前整理の実行が困難に
  • 突然の病気や事故はいつ起こるかわからない

年代別の優先事項

40代・50代の方

この世代は長期的視点での準備が可能です。

🎯 優先順位の高い項目

  • エンディングノートの作成開始
  • デジタル遺品の整理(この世代は特に重要)
  • 生前整理の着手
  • 財産の把握・記録
  • 老後資金の計画見直し

💡 この年代の特徴

  • デジタル資産が多い傾向
  • 親の介護を経験し、自分の終活の重要性を実感
  • 時間的余裕があり、じっくり準備できる

60代・70代の方

この世代は具体的な準備を加速する時期です。

🎯 優先順位の高い項目

  • 公正証書遺言の作成
  • 身元保証人の確保
  • 死後事務委任契約の検討
  • 葬儀・お墓の生前契約
  • 医療・介護の希望明確化
  • 見守りサービスの利用開始

💡 この年代の特徴

  • 実際に入院・入居の可能性が高まる
  • 判断能力があるうちの対応が必須
  • 体力的な限界を考慮した計画が必要

身じまいの進め方のステップ

📝 ステップ1:情報収集と現状把握(1~2ヶ月)

  • 自分の財産・負債をリストアップ
  • 親族・友人関係の整理
  • 利用可能なサービス・制度の調査
  • 大まかな予算の検討

📝 ステップ2:基本的な準備(2~3ヶ月)

  • エンディングノートの作成開始
  • デジタル遺品のリスト化
  • 簡単な生前整理の実施
  • かかりつけ医への希望伝達

📝 ステップ3:法的・契約的準備(3~6ヶ月)

  • 遺言書の作成(専門家相談)
  • 身元保証サービスの契約
  • 葬儀の事前相談・見積もり
  • お墓・納骨方法の決定

📝 ステップ4:サポート体制の構築(随時)

  • 死後事務委任契約の締結
  • 見守りサービスの利用開始
  • 信頼できる相談相手の確保
  • 定期的な見直し体制の確立

📝 ステップ5:定期的な見直し(年1回以上)

  • 財産状況の更新
  • 契約内容の確認
  • 連絡先情報の更新
  • 希望事項の再確認

⏱️ 所要期間の目安: 最低限の準備で半年~1年、充実した準備には1年~2年程度を見込むとよいでしょう。

身じまいで気をつけるべきポイント

信頼できるサービス提供者の選び方

身じまい関連サービスには明確な業界規制がない分野も多く、悪質な業者も存在します。

🔍 優良業者の見分け方

  • 実績・運営年数が十分にある
  • 料金体系が明確で透明性がある
  • 契約内容が詳細に文書化されている
  • 解約条件が明記されている
  • 第三者評価・認証を受けている
  • 実際の利用者の口コミ・評判が良好
  • 相談時の対応が丁寧で誠実
  • 強引な勧誘がない

⚠️ 悪徳業者の特徴

  • 料金が不透明・曖昧
  • 契約を急かす・強引に勧誘
  • 解約不可能または高額な違約金
  • 不要なサービスの抱き合わせ
  • 預託金の保全方法が不明確
  • 実績・評判を確認できない

💡 複数社からの見積もり取得を推奨: 最低でも3社程度から見積もりを取り、サービス内容と料金を比較検討しましょう。

契約時の注意点

身じまい関連の契約は長期にわたる重要な契約です。

契約前に確認すべき項目

  • サービス内容の詳細(何が含まれ、何が含まれないか)
  • 料金の内訳と総額
  • 支払い方法・時期
  • 契約期間・更新条件
  • 解約条件・違約金
  • 預託金の保全方法
  • サービス提供者が倒産した場合の対応
  • 契約内容変更の可否・方法
  • 個人情報の取り扱い

⚠️ 特に重要な確認事項

預託金の保全: 高額な預託金を支払う場合、その資金がどのように保全されるかが極めて重要です。信託銀行との連携や、第三者機関による管理など、確実な保全方法を確認しましょう。

サービス実行の保証: 契約した本人が死亡した後、本当にサービスが実行されるかどうかの保証体制を確認します。

相続人との関係: 相続人がいる場合、契約内容について相続人とトラブルにならないよう、事前に相続人へ契約の存在と内容を伝えておくことが望ましいです。

相続人や親族への配慮

疎遠であっても親族がいる場合、適切な配慮が必要です。

📞 親族とのコミュニケーション

  • 身じまいの準備をしていることを伝える
  • 遺言書の存在と保管場所を知らせる
  • 葬儀や死後の希望を共有する
  • エンディングノートの保管場所を伝える
  • 死後事務委任契約の内容を説明する

💡 トラブル防止のポイント: 親族に事前に知らせておくことで、死後の混乱やトラブルを防ぐことができます。特に、遺言書や死後事務委任契約の内容について、親族が納得できるよう丁寧に説明しましょう。

定期的な見直しの重要性

身じまいの準備は「一度やって終わり」ではありません。定期的な見直しが必要です。

🔄 見直しが必要なタイミング

  • 年1回の定期見直し
  • 財産状況に大きな変化があったとき
  • 健康状態に変化があったとき
  • 住所や連絡先が変わったとき
  • 親族・友人関係に変化があったとき
  • 法律・制度が改正されたとき

📋 見直すべき項目

  • エンディングノートの内容更新
  • 財産目録の最新化
  • デジタルアカウント情報の更新
  • 連絡先リストの確認
  • 契約内容の再確認
  • 医療・介護の希望の再検討

推奨スケジュール: 毎年、誕生日や年末年始など、決まった時期に見直しを行う習慣をつけましょう。

よくある質問

身じまいと終活の違いは何ですか?

終活は、すべての人が人生の終わりに向けて行う準備活動全般を指します。一方、身じまいは特におひとり様(身近に頼れる家族がいない単身者)が、自分の死後の準備を主体的に行うことを指す言葉です。終活の中でも、特に単身者に焦点を当てた概念といえます。

身じまいは何歳から始めるべきですか?

決まった年齢はありませんが、40代~50代から始めることが推奨されます。体力・気力・判断力が充実している時期に開始することで、じっくりと準備できます。認知症発症後や判断能力低下後では、遺言書作成などが困難になるため、早めの開始が望ましいです。ただし、思い立ったときが始め時であり、60代・70代からでも遅くはありません。

身じまいにどのくらいの費用がかかりますか?

準備内容によって大きく異なりますが、最小限の準備で30万円~70万円程度、標準的な準備で150万円~250万円程度、充実した準備では300万円~500万円程度が目安です。主な費用は、遺言書作成、葬儀の生前契約、身元保証サービス、死後事務委任契約、遺品整理などです。これらを一括で準備する必要はなく、段階的に進めることが現実的です。

親族がいる場合でも身じまいは必要ですか?

はい、親族がいても身じまいが必要なケースは多くあります。疎遠な親族しかいない場合親族が遠方に住んでいる場合親族も高齢で頼れない場合親族に負担をかけたくない場合などです。また、家族がいても、自分の希望を明確にし、財産や死後の手続きについて整理しておくことは、残された家族の負担を大幅に軽減します。

エンディングノートと遺言書の違いは何ですか?

最大の違いは法的効力の有無です。遺言書には法的効力があり、相続時に遺言書の内容に従って財産分割が行われます。一方、エンディングノートには法的効力がなく、あくまで「お願い」や「希望」を伝えるものです。財産分与など法的拘束力が必要な事項は遺言書に、葬儀の希望や家族へのメッセージなど自由に書きたいことはエンディングノートに記載します。両方を併用することが推奨されます。

死後事務委任契約は誰に依頼できますか?

死後事務委任契約は、以下の専門家・団体に依頼できます。弁護士司法書士行政書士などの法律専門家、NPO法人(終活支援を行う団体)、専門会社(死後事務代行を業務とする会社)です。それぞれ費用や得意分野が異なるため、複数の選択肢を比較検討し、信頼できる依頼先を選ぶことが重要です。

デジタル遺品とは具体的に何ですか?

デジタル遺品とは、スマートフォン、パソコン、インターネット上に存在するすべてのデジタル資産を指します。具体的には、SNSアカウント(Facebook、Instagram、Twitter)、メールアカウント、ネットバンキング・証券口座、暗号資産(仮想通貨)、サブスクリプションサービス、オンラインストレージ、デジタル写真・動画などです。これらのアカウント情報やパスワードをリスト化し、エンディングノートに記載しておくことが推奨されます。

身元保証人がいない場合はどうすればよいですか?

身元保証人を依頼できる親族や友人がいない場合は、身元保証サービスの利用を検討しましょう。NPO法人や民間専門会社が、入院・入居時の身元保証人や緊急連絡先としての役割を担ってくれます。費用は契約形態によって異なりますが、年会費制や一括払いなどがあります。契約前に、事業者の実績・信頼性、契約内容の透明性、預託金の保全方法などを十分に確認することが重要です。

まとめ

おひとり様の身じまいは、自分らしい最期を迎え、周囲への負担を最小限にするための重要な準備です。単身高齢者は今後も増加し続けることが予測されており、身じまいの重要性はますます高まっています。

準備すべきことは多岐にわたりますが、すべてを一度に完璧に行う必要はありません。エンディングノートの作成や生前整理など、できることから少しずつ始めることが大切です。

身じまいを通じて、漠然とした不安を具体的な行動に変えることで、安心して余生を過ごせるようになります。また、自分の人生を振り返り、これからの時間をより大切に生きるきっかけにもなります。

信頼できるサービス提供者を選び、定期的に見直しを行いながら、自分に合った身じまいの準備を進めていきましょう。

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