突然の訃報を受けて「数珠が無い」「数珠は自分で買ってはいけないと聞いたことがある」「数珠なしで葬式に参列しても大丈夫?」と不安になったことはありませんか。
結論から申し上げると、数珠は自分で買っても全く問題ありません。「数珠を自分で買ってはいけない」という考えは完全な迷信であり、仏教の教えにそのような記述はありません。また、数珠がなくても葬儀への参列自体に支障はないため、急な場合でも安心してください。
とはいえ、**焼香の際に数珠があったほうが「様になる」**のも事実です。一度購入すれば長く使えるものですし、大人のマナーとして一つは持っておくことをおすすめします。
この記事では、数珠がない場合の具体的な対処法、適切な数珠の選び方と購入場所、正しい持ち方とマナーまで、葬儀参列前に知っておくべき情報を分かりやすく解説します。100均の数珠の実用性についても詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
数珠は自分で買ってはいけないは迷信
結論から言えば、「数珠は自分で買ってはいけない」というのは完全な迷信です。 仏教の経典にはそのような記述は一切なく、僧侶の法話でもそのような教えは伝えられていません。現役のお坊さんも明確に「迷信」だと述べており、むしろ数珠は自分で買うべきだとしています。
「自分で買ってはいけない」説の起源と真実
この迷信が生まれた背景には、主に2つの理由があります。
嫁入り道具としての習慣:昔から一部の地域では、嫁ぐ娘の幸せを願って親が数珠を贈る習慣がありました。このような風習から「数珠は人から贈られるもの」という認識が根付き、「自分で買うものではない」という考えにつながったのです。
葬儀との強い結びつき:一般の人が数珠を使用する機会は主に葬儀や法要の場です。そのため「数珠=葬儀」というイメージが強く、新しい数珠を買うことは「近い将来に不幸がある」ことを暗示するような縁起の悪い行為だと考えられるようになりました。
しかし、これらはあくまで俗説であり、仏教の教えとは何の関係もありません。数珠を買うことと不幸があることには何の因果関係もなく、迷信に惑わされる必要はありません。
仏教的には自分で購入することに問題なし
仏教的な観点から見ても、数珠を自分で購入することに問題はまったくありません。 むしろ、数珠を自分で選んで購入することは、仏様への敬意を表す行為とされています。
そもそも数珠は葬儀だけでなく、以下のような様々な仏教行事で使用されます:
仏教における数珠の使用場面:
- 仏前での結婚式
- 仏式の地鎮祭
- 寺院への参拝
- 日々のお仏壇へのお参り
- お彼岸やお盆のお墓参り
このように、数珠は決して不幸を象徴するものではなく、仏様とのつながりを表す大切な仏具です。「縁起が悪い」という発想は、数珠をお葬式で使うことばかり考えているから生まれるものです。
数珠は自分の分身として選ぶことの意義
仏教では、数珠は持ち主の分身とも考えられており、自分で選んで購入することには大きな意義があります。
自分で数珠を選ぶメリット:
- 自分の手に馴染み、長く大切に使える数珠を選べる
- 自分の好みやこだわりを反映した素材や色を選べる
- 仏様への敬意を自ら表す行為となる
数珠には持ち主の感謝と供養の気持ちがたくさん詰まっており、だからこそ数珠に仏様のチカラが宿るとされています。自分で選んだ数珠だからこそ、より愛着が湧き、大切に扱うことができるでしょう。
葬式に数珠がない場合の完全対処法
数珠は必ずしも持たなくても問題ありません。 実際の葬儀の場では、数珠を持っている人と持っていない人が混在しており、数珠がないからといって参列を断られることはありません。
数珠なしでも参列は可能
葬儀や通夜への参列において、数珠は必須ではありません。 数珠の主な役割は焼香の際に使用することですが、数珠を持っていない場合でも心を込めて合掌・焼香することで、故人への敬意を表すことができます。
数珠がない場合でも安心な理由:
- 参列者の中にも数珠を持たない人は一定数いる
- 数珠がないことで苦言を呈されることはまずない
- 故人を敬う心が最も大切
焼香時の具体的な手順(数珠なしの場合)
数珠がない場合の焼香手順は以下の通りです:
手順 | 具体的な動作 |
---|---|
1. 焼香台へ向かう | 両手は自然に下ろし、ゆっくりと歩く |
2. 遺族・僧侶への一礼 | 焼香台の前で遺族と僧侶に向かって軽く一礼 |
3. 遺影への一礼 | 遺影に向かって深く一礼 |
4. 焼香 | 右手でお香をつまみ、額の高さまで上げてから香炉にくべる |
5. 合掌 | 両手を合わせて心を込めて合掌 |
6. 一礼して退場 | 遺影、遺族・僧侶の順に一礼して席に戻る |
数珠なしでも両手を合わせて心を込めて合掌すれば、故人への供養の気持ちは十分に伝わります。
数珠の貸し借りがマナー違反である理由
数珠を持っていない場合でも、他の参列者から数珠を借りることは絶対に避けてください。 数珠の貸し借りは仏教においてマナー違反とされています。
数珠の貸し借りがNGな理由:
- 数珠は持ち主の分身とされ、個人的な守護を担うもの
- 持ち主が受け取るはずの仏様のチカラを借りた人が横取りすることになる
- 厄除けや身代わりの役割を果たすため、他人が使うべきではない
貸し借りをするくらいなら、数珠を持たずに参列した方が良いとされているほどです。数珠がない場合は、素直に数珠なしで参列しましょう。
急遽数珠が必要になった時の購入場所
突然の訃報で数珠が必要になった場合の購入場所をご紹介します:
緊急時におすすめの購入場所:
購入場所 | 価格帯 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
100円ショップ | 110円 | 最も安価、どこにでもある | 耐久性に難あり、一時的な使用向け |
コンビニ | 500円〜 | 24時間営業、アクセス良好 | 置いていない店舗もある |
ホームセンター | 1,000円〜 | 比較的品質が良い | 仏具コーナーを探す必要あり |
紳士服専門店 | 2,000円〜 | 喪服と一緒に購入可能 | 選択肢が限られる |
最も確実なのは100円ショップです。 ダイソー、セリア、キャンドゥなどで「御念珠」として販売されており、男性用・女性用ともに揃っています。見た目も110円には見えない作りで、緊急時には十分実用的です。
ただし、100円ショップの数珠は紐が切れやすいというリスクがあります。葬儀中に紐が切れて珠がバラバラになると困るため、緊急時の一時的な利用に留めることをおすすめします。
時間に余裕があるなら仏具店での購入がおすすめです。専門知識を持った販売員に相談しながら、長く使える品質の良い数珠を選ぶことができます。
数珠の必要性を場面別に解説
数珠の必要性は参列する場面によって異なります。絶対に必要というものではありませんが、持参することが一般的なマナーとされている場面があります。ここでは場面別に数珠の必要性を詳しく解説します。
通夜・葬儀での数珠の必要性
通夜や葬儀において数珠は必須ではありませんが、参列者の過半数が持参しています。 数珠を持参する主な理由は、焼香の際に使用するためです。
通夜・葬儀での数珠の実情:
項目 | 詳細 |
---|---|
持参率 | 参列者の60〜70%程度 |
主な使用場面 | 焼香時の合掌 |
年代による違い | 中高年層ほど持参率が高い |
マナー的位置づけ | 社会人の常識として推奨 |
焼香時の数珠の役割は、故人の冥福を祈る際に心を込めて合掌することです。数珠があることで「様(さま)になる」のも事実で、参列者としての敬意を形として表すことができます。
ただし、数珠がないからといって参列を躊躇する必要はありません。 最も大切なのは故人を偲ぶ気持ちであり、数珠の有無で判断されることはありません。
法事・法要での数珠の必要性
法事や法要では、通夜・葬儀以上に数珠の持参が重要視される傾向があります。 これは法要が故人の供養を目的とした宗教的な儀式であり、より厳粛な場とされているためです。
主な法事・法要と数珠の必要性:
法事の種類と数珠の重要度:
- 四十九日法要:特に重要、ほとんどの参列者が持参
- 一周忌・三回忌:重要、親族は基本的に持参
- 七回忌以降:推奨、簡素化される場合もある
- お盆の法要:地域により異なるが一般的に持参
法事では読経の時間が長く、数珠を手にして心を落ち着かせる機会が多いため、持参することでより深い供養の気持ちを表すことができます。特に親族として参列する場合は、数珠を持参するのがマナーとされています。
お墓参りでの数珠の必要性
お墓参りでの数珠の必要性は、個人の判断に委ねられる部分が大きいです。正式な儀式ではないため、必ず持参しなければならないものではありません。
お墓参りでの数珠使用の実情:
場面 | 数珠の使用度 | 理由 |
---|---|---|
家族でのお墓参り | 30〜40% | 個人の信仰心による |
お彼岸・お盆 | 50〜60% | より丁寧にお参りしたい気持ち |
命日のお参り | 60〜70% | 特別な日として重視 |
数珠を持参するメリットは、お墓の前で手を合わせる際に、より心を込めて故人と向き合えることです。一方で、持参しない場合でも心からの供養の気持ちがあれば十分とされています。
宗派別の数珠に対する考え方
宗派によって数珠に対する考え方や重要度は異なります。 自分の宗派の考え方を理解しておくことで、適切な対応ができます。
主な宗派別の数珠への考え方:
禅宗(曹洞宗・臨済宗):
- 他の宗派ほど厳格な定めがない
- 「悟りは自分の力で得るもの」という考えから、数珠への依存度が低い
- 敬虔な信者でも本式数珠を持たないことが珍しくない
- 略式数珠で十分とする考えが一般的
浄土真宗:
- 数珠は重要な法具として位置づけられている
- 「念仏を大切にする」宗派のため、数珠の使用が推奨される
- 本願寺派と大谷派で持ち方に違いがある
真言宗・天台宗:
- 数珠を重要視する傾向が強い
- 真言宗では数珠を擦り合わせて音を出すことがある
- 天台宗でも数珠を擦って音を鳴らしながら拝む人が見られる
浄土宗・日蓮宗:
- 数珠の使用が一般的
- 念仏や題目を唱える際の法具として重視される
- 各宗派独特の持ち方や作法がある
実際の対応としては、自分の宗派が禅宗系の場合は数珠への重要度が比較的低く、浄土系や密教系の場合は重要度が高いと理解しておけば良いでしょう。ただし、参列先の宗派に関わらず、一般的なマナーとして略式数珠を一つ持っておくことをおすすめします。
100均の数珠は使えるのか
結論から言うと、100均の数珠は緊急時には十分使えますが、長期使用には向いていません。ダイソー、セリア、キャンドゥなど主要な100円ショップで110円で購入でき、見た目も一見して100円とは分からない程度の仕上がりです。

100均数珠の品質と実用性
100均の数珠の特徴は以下の通りです:
- 素材:ガラス、ポリエステル、ABS樹脂製が中心
- 価格:110円(税込)
- 種類:男性用・女性用の区別あり
- 見た目:パッと見では100円に見えない仕上がり
男性用の100均数珠は黒、濃紺、金茶の3色展開が一般的で、内径は約85mmです。女性用は黒、青、ピンクの3色展開で、内径は約75mmとなっています。透明なガラス製のものは特に見栄えが良く、お葬式や法事で使用しても違和感はありません。
緊急時の選択肢として100均数珠を使う
100均の数珠が力を発揮するのは以下のような場面です:
緊急時の活用場面:
- 急な通夜・葬儀への参列
- 手持ちの数珠を忘れた場合
- 子供用の数珠として
- 予備として常備しておく
数珠を持たずに参列するよりは、100均の数珠でも持参する方が適切です。葬儀において数珠の貸し借りはマナー違反とされているため、忘れてしまった場合には100均で購入することをおすすめします。
100均数珠の耐久性と注意点
100均数珠の最大の問題は耐久性の低さです。具体的な注意点は以下の通りです:
品質上の課題:
- 珠をつなぐ紐が切れやすい
- 房の部分がほつれやすい
- 簡易的な素材による強度不足
特に葬儀中に紐が切れて珠がバラバラになるリスクがあるため、重要な法要では避けた方が無難です。また、頻繁に使用する予定がある方には、最初から品質の良い数珠を購入することをおすすめします。
長期使用には向かない理由
100均数珠を長期使用に向かない理由は明確です:
長期使用が困難な理由:
- 紐や房の劣化が早い
- 修理に対応していない場合が多い
- 素材の質による見た目の劣化
数珠は一生使えるものという考えから、将来的には相応の品質のものを用意することが望ましいでしょう。100均の数珠は「緊急時の備え」や「予備」として位置づけ、メインで使用する数珠は別途購入することをおすすめします。
数珠の基本知識と選び方
数珠を購入する前に、基本的な種類や選び方を理解しておくことが重要です。略式数珠であれば宗派を問わず使用でき、初心者にも扱いやすいのが特徴です。
略式数珠と本式数珠の違い

数珠には大きく分けて略式数珠と本式数珠の2種類があります。
項目 | 略式数珠 | 本式数珠 |
---|---|---|
珠の数 | 22〜54個 | 108個 |
宗派 | すべての宗派で使用可能 | 宗派別に形が異なる |
使い方 | 一重で使用 | 二重にして使用 |
価格 | 比較的安価 | 高価な傾向 |
実用性 | 携帯しやすく実用的 | 正式だが大きい |
一般の方には略式数珠がおすすめです。宗派を気にせず使用でき、携帯しやすく、価格も手頃です。本式数珠は宗教的にこだわりがある方や、家系的に特別な理由がある場合に選択すると良いでしょう。
男性用・女性用の違い

数珠の男女の違いは主に珠のサイズにあります:
- 男性用:珠の直径約10〜12mm、色調は黒や濃い茶色が主流
- 女性用:珠の直径約7〜8mm、色調は多様で華やかなものもある
男性用の特徴は黒檀、縞黒檀、オニキスなどの素材が定番で、シックで落ち着いた印象を与えます。女性用の特徴は水晶、ローズクォーツ、アメジスト、パールなど多彩な素材が使われ、紫、ピンク、白などバリエーションが豊富です。

すべての宗派で使える数珠の特徴
宗派を問わず使用できる数珝の特徴は以下の通りです:
汎用性の高い数珠の条件:
- 略式(一重)の構造
- 22珠または27珠が標準的
- シンプルなデザイン
22珠の略式数珠が最も汎用性が高く、どの宗派の葬儀や法要でも違和感なく使用できます。特に初めて数珠を購入する方には、この22珠の略式数珠をおすすめします。

価格相場と適正な予算
数珠の価格相場を理解しておくことで、適切な予算設定ができます:
価格帯 | 品質・特徴 |
---|---|
100〜300円 | 100均・コンビニ(緊急時のみ) |
1,000〜2,000円 | しまむら等(一時的使用) |
5,000〜10,000円 | 一般的な品質(推奨) |
10,000〜30,000円 | 高級品・本式数珠 |
30,000円以上 | 最高級品・希少素材 |
初めて購入する方には5,000円〜10,000円の価格帯をおすすめします。この価格帯であれば、長く使える丈夫な日本製の数珠を購入でき、修理にも対応してもらえる場合が多いです。
数珠の購入場所とおすすめ
数珠はさまざまな場所で購入できますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。状況と予算に応じて最適な購入場所を選択することが重要です。
仏具店での購入メリット
仏具店は数珠選びに最も適した場所です。専門知識を持つスタッフからアドバイスを受けられ、品質の高い商品を取り扱っています。
仏具店購入のメリット:
- 専門知識を持つ販売員による相談対応
- 品質の高い商品の取り扱い
- 修理・アフターサービスの充実
- 宗派に応じた適切な選択肢の提案
ただし、実店舗では意外と品揃えが少ない場合もあります。特に本式数珠(108珠)は在庫していないことが多く、注文・取り寄せになるケースが一般的です。百貨店の仏具売り場も同様のサービスを受けられます。
オンラインショップでの購入
インターネット通販は品揃えと利便性で優れています。仏具専門のオンラインショップから、Amazon・楽天などの大手ECサイトまで選択肢が豊富です。

オンライン購入のメリット:
- 豊富な品揃えと価格比較が容易
- 購入者レビューを参考にできる
- 24時間いつでも購入可能
- 宗教別・誕生石別などの検索が可能
多くの専門オンラインショップでは電話相談にも応じており、実店舗より専門的なアドバイスを受けられる場合もあります。ただし、実物を確認できないため、サイズ感や重量感が分からないのがデメリットです。
緊急時の購入場所(コンビニ・ホームセンター等)
急な葬儀参列で時間がない場合の購入場所を把握しておきましょう。
緊急時の購入可能場所:
- 100円ショップ(ダイソー・セリア・キャンドゥ)
- 大型ショッピングセンター
- ホームセンター
- 紳士服専門店
- 一部のコンビニエンスストア
100円ショップが最も確実で、ダイソー、セリア、キャンドゥのいずれでも数珠を取り扱っています。店舗内では線香・香典袋・ライターが置かれているコーナーで見つけることができます。
避けるべき購入場所
数珠選びで注意すべき場所もあります:
注意が必要な購入場所:
- 品質表示が不明確な店舗
- アクセサリーとして販売されているもの
- 仏具としての要件を満たさない商品
特にファッション性を重視したブレスレット型の商品は、正式な仏具としての要件を満たさない場合があります。葬儀などの正式な場では、きちんとした数珠の構造(親玉・主玉・房)を持つものを選択しましょう。
数珠の正しい持ち方と使い方

数珠は故人や仏様への敬意を表す大切な仏具です。正しい持ち方を知っておくことで、葬儀や法要の際に慌てることなく、心を込めて参列できます。基本的な作法から具体的な使い方まで、場面別に詳しく解説します。
基本的な数珠の持ち方
数珠の基本的な持ち方は、左手に持つのが原則です。仏教では左手が「清浄な世界」、右手が「俗世」を表すとされており、仏具である数珠は清らかな左手で持つことが丁寧とされています。
基本の持ち方:
- 左手の親指以外の4本の指にかける
- 房(ふさ)を下に向けて垂らす
- 手を自然に下に降ろして持つ
- 右手は空けておく
数珠を持っていない場合でも、両手を丁寧に合わせて合掌すれば問題ありません。数珠がないからといって参列を控える必要はまったくありません。
焼香時の数珠の扱い方
焼香は葬儀で最も重要な場面の一つです。数珠を持っている場合と持っていない場合、それぞれの正しい手順を覚えておきましょう。
数珠を持っている場合の焼香手順
- 焼香台へ向かう際は、基本の持ち方で左手に数珠を持つ
- 遺族と僧侶に一礼してから焼香台の前に立つ
- 左手に数珠をかけたまま、右手でお香をつまむ
- お香を香炉にくべて焼香を行う(宗派により回数が異なる)
- 両手で合掌する際に数珠を使用する
- 再度遺族に一礼して席に戻る
数珠を持っていない場合の焼香手順
- 焼香台へ向かう際は両手を自然にしておく
- 遺族と僧侶に一礼してから焼香台の前に立つ
- 右手でお香をつまみ、香炉にくべて焼香を行う
- 両手をきちんと合わせて合掌する
- 再度遺族に一礼して席に戻る
重要なポイントは、焼香を行う右手を常に空けておくことです。数珠は必ず左手で扱い、右手の動作を妨げないようにします。
合掌時の数珠の使い方
合掌する際の数珠の扱い方には、いくつかの方法があります。どの方法も正しいとされているため、周囲の方の所作を参考にしながら自然に行いましょう。
合掌時の数珠の扱い方:
- 両手の親指と人差し指の間に数珠をかけて合掌
- 左手の親指と人差し指の間にかけて、右手を合わせる
- 左手にかけたまま、右手だけを合わせる
いずれの方法でも、房は手前真下に垂らすのが基本です。数珠を丁寧に扱う姿勢を示すことが最も大切で、細かな作法よりも故人への敬意を表す心が重要とされています。
数珠を持っていない場合は、両手をしっかりと合わせて心を込めて合掌します。数珠がなくても、丁寧な合掌によって十分に敬意を表すことができます。
移動時・着席時の持ち方
葬儀会場での移動中や、読経を聞いている間の数珠の持ち方にも基本的なマナーがあります。
移動時の持ち方:
- 左手で房を下に垂らして持つ
- 歩く際も左手から離さない
- バッグには入れず、常に手に持っておく
着席時の持ち方:
- 基本は左手に持ったまま膝の上に置く
- 椅子や床に直接置かない
- どうしても置く場合はハンカチや袱紗の上に置く
- 数珠袋がある場合は袋に入れて保管
着席中の注意点:
- 数珠を机の上や椅子の背もたれにかけない
- ポケットに無造作に入れない
- 他の持ち物と一緒に雑に扱わない
数珠は仏具として丁寧に扱うことが求められます。しかし、過度に緊張する必要はなく、故人への敬意を忘れずに自然に振る舞うことが大切です。
数珠を持っていない方は、両手を膝の上に置いて静かに読経を聞き、合掌の際には心を込めて手を合わせましょう。数珠の有無よりも、故人を偲ぶ気持ちが最も重要です。
宗派別数珠の持ち方(略式数珠の場合)
略式数珠であれば、どの宗派の葬儀でも基本的に使用できますが、持ち方には代表的な違いが見られます。厳密な作法は本連数珠でより重んじられますが、略式数珠でも自身の宗派や参列先の宗派に合わせて使い分けられると、より丁寧です。
浄土真宗の数珠の持ち方
浄土真宗には本願寺派(西)と大谷派(東)があり、数珠の持ち方にも違いがあります。
本願寺派(西)の持ち方:
- 数珠を二重にして合掌した両手に親指と人差し指で挟む
- 房を下に垂らす
大谷派(東)の持ち方:
- 二重にした数珠の親玉を上にして、親指と人差し指で挟むように両手にかける
- 房を左側にたらす
浄土真宗の特徴:
- 数珠を擦り合わせないのが特徴
- 煩脳具足そのままで救われるという教義に基づく
浄土宗の数珠の持ち方
浄土宗は法然上人を宗祖とし、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えればすべての者が救われるという教えの宗派です。
浄土宗の持ち方:
- 両手の親指と人差し指の間にかける
- 左手にかける方法も一般的
- 特に決まった形式はない
真言宗の数珠の持ち方
真言宗では、数珠を擦り合わせて音を出すことがあります。
真言宗の持ち方:
- 両手の中指にかけて擦り合わせ、音を出すこともある
- 一般参列者は左手にかけることが多い
- 数珠を擦ることで108の煩悩を擦り砕くという意味
曹洞宗・臨済宗の数珠の持ち方
禅宗では お念仏やお題目を唱えません。自己と向かい合う座禅を重んじるため、他の宗派のような厳格な作法が存在しないのが特徴です。
禅宗の持ち方:
- 左手の親指と人差し指の間にかける
- 二重にした数珠を左手の親指以外の指にかけ、房を下に垂らし、右手を合わせる
- 曹洞宗と臨済宗で持ち方に大きな違いはない
天台宗の数珠の持ち方
天台宗は中国の天台大師を高祖とし、日本の伝教大師最澄を宗祖としています。
天台宗の持ち方:
- 親指と人差し指の間にかけ、房を手前に垂らして合掌
- 左手に掛け、房は親指の内側に垂らして持つ
- 数珠を擦って音を鳴らす方もよく見られる
日蓮宗の数珠の持ち方
日蓮宗は日蓮聖人を宗祖とし、「南無妙法蓮華経」のお題目を唱える宗派です。
日蓮宗の持ち方:
- 左手に二重にかけ、房を下に垂らして合掌することが多い
- 数珠に特徴的な「数取玉」が付いている
宗派別持ち方の比較表
宗派 | 基本的な持ち方 | 房の位置 | 特徴 |
---|---|---|---|
浄土真宗(西) | 二重にして両手に挟む | 真下 | 擦り合わせない |
浄土真宗(東) | 親玉上、両手にかける | 左側 | 擦り合わせない |
浄土宗 | 両手の親指と人差し指の間 | 真下 | 形式に決まりなし |
真言宗 | 両手の中指にかける | 真下 | 擦り合わせることも |
曹洞宗・臨済宗 | 左手の親指と人差し指の間 | 真下 | 厳格な作法なし |
天台宗 | 親指と人差し指の間 | 手前 | 音を出すことも |
日蓮宗 | 左手に二重にかける | 真下 | 数取玉が特徴 |
これらはあくまで一例であり、地域やお寺によっても解釈が異なる場合があります。最も大切なのは故人を敬う心ですので、基本的な左手での持ち方を守り、心を込めて合掌・焼香することが重要です。もし作法に迷った場合は、周りの方の所作を参考にするのが無難でしょう。
数珠の取り扱いマナーと注意点
数珠は仏具として大切に扱うべきものです。日常では使用頻度が低いものだからこそ、正しい取り扱い方を知っておきましょう。適切なマナーを守ることで、数珠を長く大切に使い続けることができます。
数珠の貸し借りは避ける理由
なぜ貸し借りがマナー違反なのか
数珠の貸し借りはマナー違反とされています。葬儀中、数珠を持っている人と持っていない人とが混在していますが、基本的には無くても問題ありません。
貸し借りが避けられる理由:
- 数珠は持ち主の分身とされている
- 厄から守ってくれるものと考えられている
- 個人の念が込められた仏具という位置づけ
- 仏教的な思想や慣習から総合的に不適切とされる
実際の場面での対処法
焼香の時は一人ずつ席を立って焼香に向かうため、このタイミングで一時的に数珠を借りようとする人がいますが、これは避けるべきです。
数珠を忘れた場合の正しい対応:
- 数珠なしで参列・焼香をする
- 両手を合わせて合掌すれば十分
- 焦ったり気にしすぎたりする必要はない
- 貸し借りをするくらいなら、数珠を持たない方が良い
明確に貸し借りを禁止するルールがあるわけではありませんが、仏教的な思想から「数珠の貸し借りはマナー違反」と見られています。
袱紗を使った丁寧な取り扱い

基本的な取り扱いのポイント
数珠はその取扱い方に気を配るべきものです。
基本的な注意事項:
- 袱紗(ふくさ)に包んで持ち運ぶ
- 床などに直に置かない
- ポケットに無造作に入れない
- 丁寧に扱っている姿勢を示すことが大切
袱紗の選び方と使い方
弔事用袱紗の特徴:
- 紫色や黒色が一般的
- 慶事用(結婚式など)とは色やデザインが異なる
- 不祝儀袋を包むためにも使用できる
数珠を購入する時に袱紗がセットになっているものもありますし、なければ一つ持っておくと便利です。袱紗を使って丁寧に扱うことで、数珠への敬意を表すことができます。
葬儀会場での扱い方
会場での注意点:
- 席に着いたら袱紗から数珠を取り出す
- 椅子やテーブルに直接置かない
- ハンカチや袱紗の上に置く
- 使用後は速やかに袱紗に戻す
数珠の保管方法
長期保管の基本原則
数珠は使用しない時の保管方法も重要です。長く大切に使うための保管のポイントを守りましょう。
保管時の重要ポイント:
- 専用の数珠袋に入れて保管する
- 湿気の少ない場所で保管する
- 直射日光が当たらない場所に置く
- 他の仏具と一緒に丁寧に収納する
素材別の注意事項
天然素材の数珠:
- 湿気で変色する可能性がある
- 紐が劣化しやすい
- 定期的な風通しが必要
天然石の数珠:
- 直射日光で色あせることがある
- 急激な温度変化を避ける
- 他の石との接触による傷に注意
保管場所の選び方
適切な保管場所:
- 仏壇の引き出し
- タンスの上段
- 湿気の少ないクローゼット
- 専用の仏具入れ
避けるべき場所:
- 浴室近くの湿気の多い場所
- 窓際の直射日光が当たる場所
- 車内などの温度変化が激しい場所
数珠が壊れた場合の対処法
よくある破損パターン
数珠が壊れるとしたら、珠をつないでいる紐が切れる可能性が最も高いです。葬儀中に紐が切れて珠がバラバラになることは避けたいものです。
主な破損箇所:
- つなぎの紐(最も多い)
- 房の部分
- 珠そのものの割れ
- 金具部分の劣化
修理の依頼方法
修理の流れ:
- 仏具店で修理を依頼する
- 修理期間は通常2ヶ月程度かかる場合もある
- 緊急時は数珠の専門店に相談する
- 飛散した珠も忘れずに集めて持参する
修理費用の目安:
- 紐の交換:1,000円〜3,000円程度
- 房の交換:2,000円〜5,000円程度
- 珠の補充:珠の種類により大きく異なる
処分が必要な場合
修理できないほど損傷している場合は、適切に処分しましょう。
適切な処分方法:
- お寺や神社にお焚き上げを依頼する
- 仏具店での引き取りサービスを利用
- 自治体の処分方法は避けるのが一般的
数珠が切れることへの考え方
数珠が切れると縁起でもないと心配される方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。古くより、**「悪縁を絶つ」**などといわれ、むしろ良いこととされています。
前向きな捉え方:
- 悪い縁を断ち切ってくれた
- 新しいスタートの合図
- 数珠が身代わりになってくれた
予備の数珠を持つことの重要性
数珠は一度購入すれば長く使えるものですが、重要な場面で困らないよう、予備の数珠を持っておくこともおすすめします。
予備を持つメリット:
- 急な葬儀参列でも安心
- 修理中の代替として使用可能
- 家族が忘れた際の備え
- 長距離移動時の紛失リスク対策
特に親族から受け継いだ形見の数珠は、丁寧に修理して大切に使い続けることで先祖への敬意を表すことになります。
よくある質問と回答
- 数珠を忘れた場合はどうすればいい?
-
数珠がなくても葬儀参列に問題はありません。
対処法:
- 数珠なしで焼香を行う(両手を合わせて合掌すれば十分)
- 他の人から借りることは避ける(マナー違反とされている)
- 焦ったり気にしすぎたりする必要はない
- 誰かから苦言を呈されることはまず無い
緊急時の購入場所:
- コンビニ(一部店舗)
- 100円ショップ
- ホームセンター
- ドラッグストア
- 紳士服専門店
ただし、貸し借りをするくらいなら数珠を持たない方が良いというのが一般的な考え方です。
- 子供にも数珠は必要?
-
子供にも数珠を持たせるのが一般的なマナーです。
子供用数珠のポイント:
- 100均の数珠でも十分(軽量で扱いやすい)
- パール調やガラス製が子供には適している
- 万が一落としたり壊したりしても経済的負担が少ない
- 心の教育という観点でも有効とされている
子供に数珠を持たせる意義:
- 命を尊び、優しい心を育む体験となる
- 一人の人間として扱われることへの喜び
- 葬儀や法事でのマナーを学ぶ機会
物心がつく年頃になったら、自分専用の数珠を与えることをおすすめします。
- 他宗派の葬儀に自分の宗派の数珠で参列してもいい?
-
自分の宗派の数珠を持参して構いません。
基本的な考え方:
- 相手方の宗派に合わせる必要はない
- 自分の信仰する宗派の数珠を持参するのが正しい
- 略式数珠であればどの宗派でも違和感なく使える
- 宗派による細かい違いを気にしすぎる必要はない
実際の参列では:
- 参列者のほとんどが略式数珠を使用している
- 宗派の違いを気にする人は少ない
- 故人を敬う心が最も大切
迷った場合は、すべての宗派で使える略式数珠を一つ持っておくと安心です。
- 数珠の値段はどれくらいが適切?
-
5,000円〜1万円程度が一般的な価格帯です。
価格帯別の特徴:
価格帯 品質・特徴 適用場面 100円〜300円 100均・緊急用 一時的な使用 1,000円〜3,000円 基本的な品質 初回購入・普段使い 5,000円〜1万円 一般的な相場 長期使用・正式な場 1万円〜3万円 高品質・本連数珠 こだわり・格式重視 3万円以上 高級素材・希少材 特別なこだわり 選び方のポイント:
- 長く使える品質を重視する
- 使用頻度に応じて予算を決める
- 日本製の方が一般的に品質が良い
- 修理サービスの有無も確認する
最低限、明らかに安っぽく見える素材を避ければ問題ありません。
- ブレスレット型の数珠でも大丈夫?
-
正式な場では適切ではありません。
ブレスレット型数珠の問題点:
- ファッション性重視で仏教的意味が薄い
- 正式な数珠の構成要素(親玉・房など)を満たさない
- 葬儀などでの使用はふさわしくないとされている
- 宗教的な意味を持たないアクセサリーとみなされる
適切な使用場面:
- 普段のお守りとして
- カジュアルなお墓参り
- 個人的な祈りの時
正式な場では:
- 親玉・主玉・天玉・房を備えた正式な数珠を使用
- 略式数珠でも構わない
- アクセサリー類ではなく仏具として認められるもの
- 100均の数珠でも大丈夫?
-
緊急時や一時的な使用であれば問題ありません。
100均数珠のメリット:
- 見た目は100円に見えない洗練されたデザイン
- 緊急時にすぐ入手できる
- 子供用としても適している
- 万が一の紛失リスクが低い
100均数珠の注意点:
- 耐久性に課題がある(紐が切れやすい)
- 長期使用には向かない
- 一時的な利用に限定するのが適切
推奨する使い方:
- 急な葬儀参列での緊急対応
- 予備として車に常備
- 忘れた人への貸し出し用(ただし新品を渡す)
- 結婚したら数珠は買い直すべき?
-
必ずしも買い直す必要はありません。
結婚後の数珠について:
- 独身時代の数珠をそのまま使用して問題なし
- 数珠は個人の仏具なので結婚により変わるものではない
- 夫婦でペアの数珠を購入する方もいる
新調を検討する場合:
- より良い品質のものにアップグレードしたい
- 夫婦で揃えたデザインにしたい
- 家族の宗派に合わせた本式数珠に変更したい
実用的な選択:
- 一つあれば十分というのが一般的
- 予算があれば夫婦ペアセットも良い選択
- 家族で統一感を出したい場合は新調も有効
- 故人の数珠を形見として使ってもいい?
-
形見として受け継ぐことは一般的に行われています。
形見の数珠について:
- 故人への敬意を表す行為として受け入れられている
- 先祖代々受け継がれることも多い
- 丁寧に修理して使い続けることが推奨される
注意すべきポイント:
- サイズが合わない場合は修理・調整を検討
- 傷んでいる場合は専門店で修理
- 自分に合った使いやすさも重要
新調との使い分け:
- 形見の数珠は特別な法要で使用
- 普段使いは新しく購入した数珠を使用
- 複数持ちで使い分ける方法も有効
葬儀の数珠まとめ
数珠は自分で購入しても全く問題なく、「自分で買ってはいけない」は完全な迷信です。むしろ自分に合ったものを選べるメリットがあります。
記事の要点:
- 数珠がなくても葬儀参列は可能だが、持参することが一般的なマナー
- 100均の数珠も緊急時には実用的だが、長期使用を考えるなら品質の良いものを選ぶ
- 宗派による持ち方の違いはあるが、基本は左手で持ち、故人を敬う心が最重要
- 貸し借りは避け、一人一つ自分専用の数珠を持つ
- 価格は5,000円〜1万円が一般的、使用頻度に応じて予算を決める
今後のアクション:
- 数珠を持っていない方は、余裕のあるうちに一つ購入しておく
- 100均の数珠しか持っていない方は、より品質の良いものへのアップグレードを検討
- 正しい持ち方と基本的なマナーを覚えておく
- 数珠袋や袱紗も合わせて準備しておく
数珠は一度購入すれば長く使えるものです。大人のマナーとして、また故人への敬意を表すためにも、自分に合った数珠を選んで大切に使い続けましょう。