家族を亡くした悲しみの中、葬儀の準備に追われながら「費用はどれくらいかかるのだろう」「少しでも負担を減らせる制度はないだろうか」と不安を抱えていませんか?実は、健康保険から3〜7万円の給付金を受け取れる制度があります。しかし、この制度は申請しなければ受け取れず、知らずに損をしている方が少なくありません。
本記事では、公的機関の最新情報に基づき、葬祭費・埋葬料の申請方法を分かりやすく解説します。給付金の種類と金額の違い、申請に必要な書類、申請期限の注意点、さらに直葬(火葬のみ)でも給付金が受け取れるのかまで、実務的な情報を網羅しています。
この記事を読めば、確実に給付金を受け取るための手順が分かり、葬儀費用の経済的負担を少しでも軽減できます。申請期限は「2年以内」ですが、実は給付金の種類によって起算日が異なるという重要なポイントがあります。期限切れで後悔しないよう、今すぐ確認しましょう。
葬祭費・埋葬料とは|給付金の種類と金額
故人が加入していた健康保険の種類によって、給付金の名称や金額が異なります。これらの給付金は自動的に支給されるものではなく、必ず申請しなければ受け取れませんので、忘れずに手続きしましょう。
国民健康保険:葬祭費
**国民健康保険(国保)**に加入していた方が亡くなった場合に支給される給付金です。主に自営業者や退職者が加入している保険制度です。
給付金の特徴:
- 名称:葬祭費(そうさいひ)
- 給付額:自治体によって異なり、3万円から7万円の範囲
- 一般的な金額:多くの自治体では5万円
- 東京23区の場合:一律7万円
- 申請先:故人が住んでいた市区町村の役所(国民健康保険担当窓口)
市区町村のウェブサイトで「葬祭費」と地域名で検索すると、正確な給付額を確認できます。
後期高齢者医療制度:葬祭費
75歳以上(一部65歳以上で一定の障がいがあり認定を受けた方)が加入する医療制度からの給付金です。
給付金の特徴:
- 名称:葬祭費(そうさいひ)
- 給付額:自治体によって異なり、3万円から7万円の範囲
- 申請先:故人が住んでいた市区町村の役所(後期高齢者医療担当窓口)
国民健康保険と同様に、各自治体のウェブサイトや窓口で正確な給付額を確認できます。
被用者保険の給付金
会社員・公務員など被用者保険(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合など)に加入していた方の場合の給付金です。故人と申請者の関係によって種類が分かれます。
埋葬料
被保険者本人が亡くなった場合の給付金です。
給付金の特徴:
- 対象:被保険者(本人)が死亡した場合
- 受給者:故人によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹など)
- 給付額:一律5万円
- 申請先:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など(加入していた保険者)
家族埋葬料
被保険者の被扶養者が亡くなった場合の給付金です。
給付金の特徴:
- 対象:被保険者の被扶養者(配偶者や子など)が死亡した場合
- 受給者:被保険者本人
- 給付額:一律5万円
- 申請先:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など(加入していた保険者)
埋葬費
上記の受給資格がない場合の給付金です。
給付金の特徴:
- 対象:埋葬料を受け取る資格のある遺族がいない場合
- 受給者:実際に埋葬を行った人(親戚や知人など)
- 給付額:実費支給(上限5万円)
- 申請先:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など(加入していた保険者)
【参考】
・全国健康保険協会(協会けんぽ)埋葬料について
・協会けんぽ 埋葬料支給申請書
付加給付について
一部の健康保険組合や共済組合では、法定給付(5万円)に加えて独自の付加給付が上乗せされる場合があります。金額は組合によって大きく異なります(数万円〜数十万円)ので、故人が加入していた健康保険組合や共済組合に直接確認しましょう。
会社員の方は、勤務先の人事部や総務部に相談すると、申請手続きや付加給付の有無について案内してもらえる場合があります。
葬祭費・埋葬料の申請方法と手続きの流れ
申請方法は保険の種類によって若干異なりますが、基本的な流れは共通しています。葬儀後の給付金を確実に受け取るため、以下の重要事項を確認しましょう。
申請期限は2年以内(起算日に注意)
各種給付金の申請期限は2年以内ですが、給付金の種類によって起算日が異なりますので注意が必要です:
⚠️ 申請期限の起算日:
- 埋葬料:故人が亡くなった日の翌日から2年以内
- 葬祭費:葬儀を行った日の翌日から2年以内
- 埋葬費:埋葬を行った日の翌日から2年以内
この期限を過ぎると時効となり、申請権利が消滅してしまいます。できるだけ早めに手続きを行うことをおすすめします。
葬儀後の様々な手続きと並行して、この給付金申請も忘れずに行いましょう。特に、死亡届や相続関連の手続きなど、市区町村役場に行く機会があれば、同時に確認すると効率的です。
申請先一覧
給付金の申請先は、故人が加入していた健康保険の種類によって異なります。以下の適切な窓口で手続きを行いましょう:
📍 申請先:
- 国民健康保険・後期高齢者医療制度:故人が住民票を置いていた市区町村の役所
- 協会けんぽ:最寄りの全国健康保険協会支部
- 健康保険組合:各健康保険組合の窓口
- 共済組合:各共済組合の窓口
申請前に電話で確認すると、必要書類や受付時間などがわかり、スムーズに手続きが進みます。多くの窓口では郵送での申請も受け付けているため、遠方の場合は問い合わせてみるとよいでしょう。
申請に必要な書類
申請には以下の書類が必要です。申請先によって若干異なる場合があるため、事前に確認しましょう:
📋 必要書類リスト:
- 支給申請書(申請先の窓口やウェブサイトで入手)
- 亡くなった方の健康保険証(返却)※2025年11月時点では資格確認書でも可
- 死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー、埋火葬許可証のコピー、戸籍謄本など)
- 葬儀を行ったことを証明する書類(葬儀費用の領収書、会葬御礼のハガキなど)
- 申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 申請者の印鑑(認印可の場合が多い)
- 振込先口座情報(通帳やキャッシュカードのコピー)
- マイナンバー関連書類(自治体により記載欄がある場合があるが、多くは任意)
書類のコピーは、原則としてA4サイズで準備します。原本が必要な場合は窓口で確認してください。
申請手続きの流れ
申請の基本的な流れは以下のとおりです:
1️⃣ 必要書類を準備する 上記リストを参考に、漏れがないよう確認しましょう
2️⃣ 申請先の窓口に書類を提出する 窓口での提出が基本ですが、郵送可能な場合もあります
3️⃣ 審査・振込 書類審査後、指定口座に給付金が振り込まれます
💰 振込時期の目安:
- 埋葬料:2〜3週間程度
- 葬祭費:1〜2ヶ月程度
申請時に不明点があれば、窓口の担当者に質問するとスムーズです。また、申請後は念のため振込予定日を確認しておくと安心です。
直葬・火葬のみでも給付金は受け取れるか
近年増えている直葬(火葬のみ)の場合、給付金が受け取れるかどうかは保険の種類によって異なります。
埋葬料(被用者保険)の場合
結論:受け取れます
埋葬料は葬儀の実施を支給要件としていません。被保険者が亡くなった時点で支給されるため、たとえ葬儀を行っていなくても、今後葬儀を行う予定がなくても、申請すれば必ず支給されます。
葬祭費(国民健康保険)の場合
結論:自治体によって異なります
葬祭費は「葬祭」に対する給付という性質上、自治体によって対応が分かれます。
東京23区の例
支給対象外(4区):
- 港区、杉並区、足立区、千代田区
- 理由:「葬祭費」はあくまで「葬祭」に対する給付であり、火葬のみでは該当しないと判断
- ただしこれらの区でも、家族だけの「お別れの会」を開けば申請可能な場合がある
支給対象(19区):
- 世田谷区、江戸川区、北区、渋谷区、新宿区、中野区、練馬区、板橋区、豊島区、目黒区、品川区、大田区、文京区、台東区、中央区、荒川区、葛飾区、江東区、墨田区
その他の主要都市
支給対象外:
- 横浜市
支給対象:
- 横須賀市、新座市、相模原市
全国的には、ほとんどの自治体で火葬のみを行った場合でも葬祭費の申請が可能です。ただし、火葬のみでは支給対象外とする自治体でも、別途「お別れの会」などを開けば支給対象になる可能性があります。
申請前に、必ず居住地の市区町村に確認することをおすすめします。
健康保険証廃止と申請手続きへの影響
現在の状況(2025年11月時点)
2024年12月2日をもって健康保険証の新規発行が停止されましたが、現在は移行期間中です。
✅ 利用可能な証明書類:
- 既存の健康保険証:2025年12月1日まで有効
- 資格確認書:2025年12月1日まで有効(マイナ保険証を利用していない方に交付)
- マイナ保険証:利用可能
⚠️ 2025年12月2日以降: 資格確認書も使用不可となり、マイナ保険証が実質必須になります
【参考】
・デジタル庁|資格確認書(マイナ保険証以外の受診方法)
・デジタル庁|よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について
・厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用について
申請時に必要な書類の変更点
葬祭費・埋葬料の申請時に「故人の健康保険証」を返却する必要がありますが、2024年12月以降は以下の対応となります:
📝 健康保険証の代替対応:
- 既存の健康保険証を持っている場合:そのまま返却
- 資格確認書のみの場合:資格確認書を提出
- マイナ保険証のみの場合:マイナンバーカードの提示または資格確認書の提出
申請方法自体に大きな変更はありませんが、不明点がある場合は申請先の窓口に事前確認することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- 葬儀社が立て替えた場合でも申請できますか?
-
はい、申請できます。葬儀社の領収書に申請者の名前が記載されていれば、申請者が費用を負担したとみなされます。領収書の宛名は必ず申請者本人の名義であることを確認してください。
- 会社を通じて申請する場合の流れは?
-
勤務先の人事・総務部門に相談してください。会社に死亡の事実を報告し、必要書類を提出すれば、申請手続きを代行してくれる場合が多いです。
- 申請をし忘れていた場合はどうすればいいですか?
-
2年以内であれば申請できます。時効成立前であれば、すぐに該当の窓口に相談しましょう。
- 複数の健康保険に加入していた場合はどうなりますか?
-
原則として、主たる保険から給付を受けることになります。葬祭費と埋葬料を両方受け取ることはできません。
- 申請後、給付金はいつ頃受け取れますか?
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埋葬料は申請から2〜3週間程度、葬祭費は1〜2ヶ月程度で振り込まれます。申請時期や自治体・保険者によって処理期間は異なります。
- 葬祭費・埋葬料以外に受け取れる給付金はありますか?
-
はい、遺族年金(厚生年金や国民年金に加入していた場合)、死亡退職金(会社員の場合)、生命保険金(個人で加入していた場合)、死亡一時金(国民年金に3年以上加入し年金を受給していなかった場合)などがあります。
- マイナンバーは申請時に必要ですか?
-
多くの自治体では申請書にマイナンバーの記載欄がありますが、記載は任意とされている場合がほとんどです。本人確認書類としてマイナンバーカードを使用することは可能です。
- 直葬(火葬のみ)でも葬祭費は受け取れますか?
-
埋葬料(被用者保険)の場合は問題なく受け取れます。葬祭費(国民健康保険)の場合は自治体によって対応が異なりますので、必ず居住地の市区町村に事前確認してください。
- 申請期限の起算日はいつからですか?
-
給付金の種類によって異なります。埋葬料は故人が亡くなった日の翌日から、葬祭費は葬儀を行った日の翌日から、埋葬費は埋葬を行った日の翌日から、それぞれ2年以内です。
まとめ
葬祭費・埋葬料の給付金は申請しなければ受け取れません。故人が加入していた保険の種類を確認し、期限内に必ず申請しましょう。
給付金額は保険の種類や地域によって異なり、国民健康保険・後期高齢者医療制度では自治体により3〜7万円、被用者保険では一律5万円が基本です。申請期限は2年以内ですが、給付金の種類によって起算日が異なるため注意が必要です。
申請書類に不備がなければ、埋葬料は2〜3週間、葬祭費は1〜2ヶ月程度で指定口座に振り込まれます。不明点は故人が加入していた保険者(市区町村役場や健康保険組合など)に直接問い合わせることをおすすめします。
お葬式にはさまざまな費用がかかりますので、こうした給付金制度を活用して、少しでも経済的負担を軽減しましょう。

